無垢フローリング選びの基本
2024. 04. 03 | 家づくりガイド |
無垢フローリングは豊かな風合いとやさしい肌触り、心地よい香りなど、木本来の魅力が味わえる「自然素材の家」には欠かせない素材です。
その反面、傷やへこみがつく心配や、汚れやシミがついてしまった場合の対応、樹種による金額の違いもあり選択に困ってしまうかもしれません。
無垢材は長い年月をかけて味わいが増し、愛着を持って大切にしていける素材です。
天然素材ならではの特徴や注意点を十分に理解して、お気に入りの無垢フローリングを選んでみましょう。
はじめに無垢フローリングの特徴を理解しましょう
無垢フローリングの特徴をみていくと、自然素材特有の特徴が捉え方によってはメリットにもデメリットにもなりうることが分かります。
ネガティブに捉えるのか、ポジティブに捉えるのかは考え方次第ですが、無垢フローリングを選択する上で大きな決め手となりそうです。
■一本の木から切り出した無垢材は、箇所によって木目の方向や模様が異なります。
・人工的に作られた木目調のパターンとは違って、表情豊かな世界に1つだけの木目模様です。
・模様と色が全て異なるので、組み合わせによってはバラツキがあるように見えてしまいます。
■樹種によって色、木目、肌触りや硬さは多種多様です。
・天然木独特の質感や優しい肌触りと温もりは、他の人工的な材料では再現できません。
・優しい肌触りの「柔らかい木」は傷つきやすいので、傷つきにくさを重視する場合は「かたい木」を選びましょう。
■無垢フローリングは価格が高めです。
・無垢フローリングは複合フローリングに比べて費用がかかります。また、1日に施工できる面積が少ないので手間がかかり、施工コストも高くなりがちです。
樹種によっても金額が異なるため、予算によっては選択が制限されることがあります。
・無垢フローリングは適切なメンテナンスをすれば長くお使いいただけます。キズ、汚れは表面を削ることで補修ができ、再塗装も可能です。
その反面、価格の安い複合フローリングは耐久性は劣り、一度キズになると基材の合板が見えたり、補修がやりづらいため、数十年後には張り替えの必要があります。
無垢フローリングは、長い目で見るととても経済的です。
■室内の広範囲に無垢フローリングを施工すると高い調湿効果が期待できます。
・生息している樹木は、多くの水分を含んでおり含水率は150%以上にまで達します。建築材料として使うには、最低でも30%程度にまで乾燥させるため、木材は空気中の湿気を多く抱え込むことができます。
つまり湿気の多い時期には水分を吸収し、乾燥の季節には空気中に水分を放出することができるので、天然の調湿材としての機能を果たします。
・季節による湿度の条件次第で、膨張と収縮を繰り返すので伸縮・変形が起き、反りや隙間、場合によっては木割れ、継ぎ目部分の実(さね)がこすれて床鳴りが発生します。
■無垢フローリングは化学物質を含んだ接着剤や塗料を使っていません。
・無垢フローリングは天然の樹木から切り出されており、フローリングそのものに接着剤を用いていません。アレルギー体質の方や小さなお子様にとって安全な天然素材です。
■日常的な掃除のほかに、無垢材ならではのお手入れが必要です。
・表面にコーティング加工がされていないので、無垢フローリングには耐水性がほぼありません。撥水性を保つためにはワックス等で手入れする必要があります。
・無垢材はお手入れをすることによって、ツヤが出たり経年変化を感じることができます。
■無垢材は経年変化が現れやすい材料です。
・日焼けすると、木材が本来持っている油分によって段々と艶が増してくる樹種や、木目が薄くなったり濃くなったりする樹種もあります。
・経年変化することで素材の深みが増して味わいが出てきます。
■木の癒し効果でリラックス
・森林浴の癒し効果はよく知られていますが、その癒しの正体は木の香りです。木の香り(フィトンチッド)によって血圧が下がり、脈拍も落ち着き、身体的ストレスや精神的ストレスを感じたときに分泌されるコルチゾールの濃度も下がります。ストレスの多い現代人には、木のある空間でリラックスすることは理想的な癒しになりますね。
無垢フローリングを選ぶのであればどの樹種?
無垢フローリングは「柔らかい木」「かたい木」の樹種によって異なる特徴があることが分かりました。
それでは、代表的な樹種に焦点を当ててそれぞれの特徴を具体的にみていきましょう。
■杉 スギ
・日本の固有種で日本にしか生育していない杉はもっとも身近な木であるといえます。
・足触りがとても柔らかく、すべすべとした質感で肌なじみの良い材種です。多孔質なので空気をより多く含み、断熱・蓄熱性が高い(冷たさを感じにくい)のも大きなメリットです。
・杉は調湿作用の高い素材です。周囲の湿度が高いときは水分を吸い、湿度が低いと水分を発散させる特性があります。
・傷つきやすく汚れやすいというデメリットがありますが、傷や汚れも使っていくうちに馴染んでいきます。
また、補修することで目立ちにくくすることもできます。
■桧 ヒノキ
・桧は日本を代表する高級木材として重宝されてきました。法隆寺や東大寺といった歴史的建築物は桧で造られており、伊勢神宮で20年に1度行われる式年遷宮でお宮が建て替えられる際にも大量の桧材が使われています。
・最大の特徴は、他の無垢材と比較しても突出している高い耐久性です。伐採してから200年間は木材として強度が高まっていくと言われます。ただし、表面が柔らかくて滑らかなため、広葉樹に比べると摩耗や衝撃によって傷つきやすい点は要注意です。
・ヒノキの香りにはリラックス効果があり、香り成分には抗菌・防虫・消臭といった効用が期待できるものも含まれています。
■ナラ
・ナラという名称は特定の樹木の名称ではなく、ブナ科・コナラ属の中の落葉性広葉樹の総称です。英語名ではオークといい、産地によって呼び方が異なります。
・重厚感があり耐久性が高いのが特徴です。かたくて傷が付きにくいので、土足で利用する店舗にも使用することができます。物を落としたりキャスターなどでこすったりなどしても、傷がつきにくいというメリットがあります。
・ウイスキーの樽に使用されるほど耐水性に優れており、飲み物や食べ物を落としてしまったときも染みがつきにくいです。そのためキッチンの床材として利用されることもあります。
・調湿作用があるもののそれによる伸縮の幅は小さいです。そのためほかの無垢材に比べ、割れや反りなどの変形は比較的少ないといえます。一方で、湿度による膨張や乾燥による収縮を繰り返すうちに割れてしまうリスクを伴います。
・かたい性質であることから釘を打つ前に下穴をあけるなど手間がかかるために、加工性が低い木材といえます。
■アメリカンブラックチェリー
・アメリカ北東部を主な原産地とする高級材の広葉樹です。
・単色では表現できない赤褐色の深い色味が特徴です。木材自身が持つ油分が表面を美しく保護しているので、自然なツヤ感と飴色のような深い色味が際立ち、木肌には不規則な色味の濃淡があります。
・木材自体は切削や研磨もしやすい一方で、十分なかたさを持っています。加工後の膨張や収縮も少ないので、狂いが少ない特徴があります。
・ほかの木材に比べて紫外線による経年変化が激しく、時間がたつにつれて深い赤みが増していき、一定のレベルに達すると落ち着きます。経年変化が終わった色合いも赤みが増して美しいです。
■チーク
・チークは高級木材である、世界三大銘木(ウォールナット・マホガニー・チーク)の一つです。
・木材そのものが、かたく優れた耐久性を発揮します。強い力が加わっても変形しにくい特徴があります。
・ワックスのような役割を果たしているタール(天然の油分)を多く含んでおり、水や虫などに強い耐性を示します。ほかのフローリングと異なり耐水性が高いので、水拭きできる長所があります。屋外の床や甲板などにも使用されます。
・タールは年を重ねるごとに徐々に蒸発していき、それに合わせて木材表面の色合いも変化します。新品のチーク材は白っぽく黒い木目が現れますが、歳月が経過していくと徐々に赤みがかった色に変化していきます。
■ブラックウォールナット
・ウォールナットは胡桃(クルミ)の実がなる木。主に北米産のものを指します。白太と呼ばれる辺材が比較的少なく、深い色合いと美しい木目が特徴です。
・ウォールナットはかたく耐久性にも優れています。そのため物を落としたり引っかいたりしてしまっても、傷がつきにくいです。またほかの床材に比べて、湿気や乾燥による膨張・収縮といった変化も起こりにくいです。
・経年による色の変化が起こります。最初は深い濃茶だった色が徐々に明るく変わっていき、木目がよりはっきりして温かみが増していきます。
お手入れの楽しさを実感してみませんか?
無垢フローリングはお手入れが大変だと思われがちですが、日常的なお掃除と年に1回程度の定期的なお手入れで十分です。また、傷がついても自分で補修することができ、傷あとさえも味になっていきます。
手間をかけるほどに愛着が湧き、お手入れすることが楽しみに変わるかもしれません。
前述の通り、傷や汚れのつきやすさは「柔らかい木」「かたい木」に由来しますが、お手入れの方法は一般的にどの樹種でも共通しています。
■傷について
・無垢フローリングは金太郎あめのようにどこを切っても無垢材があらわれます。つまり傷がついても無垢材があらわれるので、複合フローリングのように下地が現れてしまう劣化の傷とは異なります。傷が気になる場合は、紙やすりやアイロンを使って目立たせなくすることができます。
■汚れについて
・明るい色は汚れが目立ちますし、濃い色は埃や白いペットの毛などが目立ちます。
また、キッチンの油・水撥ねやダストBOX周辺、洗面室・トイレの水回りなど、頻繁に行き来する動線は生活している上で汚れは避けられません。
無垢フローリングは隙間があり、季節によって収縮する樹種もあるので、細かいゴミやホコリが気になる場合は楊枝などで掻き出します。
■日常的なお掃除と定期的なお手入れについて
・無垢フローリングの普段のお手入れは難しくありません。基本的には掃除機またはフローリングワイパーの乾拭きをして、汚れは固く絞った雑巾などで拭きとります。水に弱いので水汚れはすぐに拭き取ることがポイントです。
・定期的なお手入れをひと手間かけるかどうかで、経年変化にも差がつきます。汚れが気になってきたらクリーナーで汚れを落とし、蜜蝋ワックスなどを再塗布して表面を保護してあげます。広い面積を一度に行うことは大変なので気になるところを部分的に行ってもよいと思います。
無垢フローリングはこんな方におすすめです
無垢フローリングの魅力は、年月と共に変化する表情を楽しめることです。手間をかけてお手入れしていくうちに愛着が湧き、たとえ傷があっても思い出と共に刻まれているので味わいになります。
無垢フローリングの場合は完成した時が満点だとしたら、年数を経るごとに加点方式になるといえるのではないでしょうか?
一方、複合フローリングは完成した時は同じ満点でも、傷がついていくと劣化していくので減点方式といえます。
無垢フローリングは、経年変化も味わいとして楽しめる方、傷などにも適度なおおらかさで向き合える方におすすめです。経年劣化ではなく、経年美化していくお気に入りの無垢フローリングを選んでみましょう。