床材にウールカーペットという選択肢も。
2024. 06. 25 | 家づくりガイド |
下の写真は、リビングにウールカーペットを採用した施工例です。
クッション性があってふかふかしたウールカーペットの肌ざわりは、のんびり寝転がったり、お子さんたちがじゃれ合ったり、床の上でリラックスしたい空間におすすめです。
しかし、実際のところカーペットは、「ダニやホコリが気になる」「なんか汚れやすそう」と不衛生なイメージを持たれている方も多く、選択肢にすら上がらないことも…
ということで、今回はウールカーペットの特徴や選び方、メンテナンス方法についてご紹介します。
目次
- 1. ウールカーペットの特徴
- 2. ウールカーペットのパイルの種類
- 3. おすすめの色
- 4. ペットがいても大丈夫?
- 5. ウールカーペットのおすすめメーカー
- 6. まとめ
ウールカーペットの特徴
カーペットは部屋全体に敷く敷物のことで、ウール素材には以下のような特性があります。
〇 冬あたたかく、夏はサラリ
ウールは、セーターやブランケットとして使われているように優れた断熱性を持っているので、冬あたたかいイメージがありますよね。そのため、夏は暑そうと思われますが、意外にも蒸し暑い季節でも暑苦しく感じず、むしろ手で触れるとひんやりとする素材です。
ウールの繊維には、湿気を吸収して放出する「調湿機能」があり、コットンの2倍、ポリエステルの30倍という湿気を吸収できるため、ジメジメした梅雨の季節でもサラリとしています。一方で湿度が50%以下になると、内部に蓄えた水蒸気を放湿し、湿度をコントロールします。
ウールは部屋全体の空気を一定に保とうとするので、エアコンの効きもよくなり、省エネにもなります。
〇 汚れにくく、撥水性がある
ウールの成分は「髪の毛」と基本的に同じで、ウール自身の油分やキューティクルで水分をはじき、汚れ自体がつきにくく落としやすい素材です。
牛乳やジュースをこぼしても、慌てず乾いた布で吸い取ればOK。
お醤油やケチャップなど色素のある目立つ汚れは、染み込まないうちにできるだけ早くお湯で湿らせて、乾いた布で吸い出します。
繊維が毛羽立ったり、汚れも落ちにくくなってしまわないよう、「絶対にこすらない!」ことが重要です。
〇 繊維がつぶれても元に戻りやすく、耐久性に優れている
カーペットは、上に置いた家具の跡がどうしてもつきやすいです。化学繊維や綿製品は一度繊維がへたると、なかなか元に戻りにくいですが、ウールは復元することができます。
メンテ作業は非常に簡単で、凹んだ部分に家庭用アイロンのスチームショットを少し離して当てます。
そのあと、スチームの湿気を乾いた布でしっかり吸い出してください。ドライヤーで乾かしていただくとふんわり仕上がり、より効果的です。
もし、カーペットが全体にへたってきた場合は、スチームクリーナー(例えばH2OやケルヒャーSC1など)でカーペット全体を一年に一回程度お掃除すると、へたりも復元できます。
〇 汚れを遊び毛として放出する自浄作用がある
ウールカーペットからホコリが出てきますが、これはホコリではなく「遊び毛」といいます。
カーペットが汚れてしまった場合、その時ついた汚れは6割程度取り、あとは普段の掃除の時に掃除機で吸い取れば、遊び毛が汚れを一緒にからめとってくれるので、カーペットの美観が維持できます。
最初のうちは遊び毛の量も多いですが、掃除機をかけるくらいでは生地が痩せることはないので心配いりません。
〇 ハウスダストの舞い上がりを抑制してくれる
アレルギー性の喘息や鼻炎などにお悩みの方は、カーペットを敷くこと自体が不安に思われると思いますが、カーペットはむしろホコリをしっかり吸着してくれるという特徴があり、空気中へのホコリの舞い上がりをフローリングの約1/10程度に抑えてくれます。
特に複合フローリングは、静電気が発生してホコリを吸着しやすい反面、無垢フローリングのように湿気でホコリを湿らさないので、積もったホコリの上を歩いたり、いきなり掃除機をかけてしまうとホコリが舞ってしまいます。そして舞ったホコリはまたゆっくりと床の静電気に吸い寄せられ再び着地する、という悪循環が起きています。
カーペットのほこりの吸着はパイルの効果によるもので、毎日の掃除機掛けをしておけば快適な室内環境を保ってくれます。
また、ダニはウールを食べるわけではなく、皮脂や角質、食べこぼしなどエサになる物がある状態で発生しやすくなります。
アレルギー症状の原因の一つがダニアレルゲンであることは事実ですが、その多くが布団などの寝具から空気中に舞い上がったもので、カーペットの素材自体としては無関係です。
毛足が短く密度の高いカーペットであれば、ダニのエサになるようなゴミも入りこみにくく、除去しやすいので、日々の掃除を丁寧にすることで、ダニも発生しにくいので安心してお使いいただけます。
〇 お手入れ方法が簡単
日常のメンテナンスは、掃除機がけだけです。
ウールカーペットの場合は、回転式ヘッドを内蔵した掃除機がおすすめです。
ほこりや小さなゴミ、カーペット表面の「遊び毛」をしっかり掻き出し吸い込むことで、そこについた汚れも一緒になくなります。繰り返しになりますが、汚れやダニ、アレルゲンの元を取り除くためにも大切なメンテナンスです。
※ダイソンの掃除機では、ヘッドは必ずカーペット用のものをお使いください(モーターヘッド、ダイレクトドライブクリーナーヘッドなど)。しっかりとした硬いブラシでホコリや小さなゴミ、遊び毛を掻き出してくれます。
フローリング用ヘッドでは、遊び毛をカーペットに押し付けるお掃除になってしまい、表面を高速で擦るので毛玉ができやすく、毛やゴミが絡まったような状態になることがあります。
〇 燃えにくい
ウールは難燃性の繊維で、火源を取り除けば燃焼し続けることがなく、自然に鎮火して燃え広がりません。
これは、ウールの中に多くの窒素(16%)や水分(15%)を含んでいるためです。その難燃性から、ウールは旅客機の内装や消防服にも使用されています。(消防服は現在はアラミド繊維が主流)
〇 足腰にやさしい
年配の方が室内で転倒してケガをされるという家庭内事故が多いですが、カーペットは滑りにくく、弾力があり、転倒した際の衝撃も吸収してくれます。
〇 吸音性がある
ウールカーペットには雑音を吸収するという特性があります。
繊維と繊維が複雑に絡み合って空気の層をつくり、それが雑音や騒音を吸収してくれるので、足音や話し声などの反響も防ぎます。
コンサートホールやレコーディングスタジオでウールカーペットが利用されているのは、ウールのこんな力を生かしています。特に、ループパイルよりもカットパイルの方が効果が高いです。※パイル種類は後述します
▲ 化学繊維に比べると、価格がやや高め
ウールカーペットの初期費用はある程度かかってしまいます。(6畳で30万円〜40万円程度が目安です)
ですが、カーペットは張り替えも可能で、場合によっては下に使っているクッション材はそのまま使うこともできるので、リフォームの際もそれほどコストがかからない場合が多いです。
ウールカーペットのパイルの種類
カーペットの毛足(パイル)の形状には以下の3種類があります。
・カットパイル
毛足が切られているカットパイルはやわらかい肌触りです。一方で、へたりやすかったり、耐久性の面では少し劣ります。そのため、重たいものを置かない場所や、人の出入りが少ない場所に適しています。
ループに比べると「遊び毛」の量が多いですが、遊び毛が多いということは、一度ついた汚れも落ちやすいです。
〇 カーペットの継ぎ目がループ商品にくらべて分かりづらいです
〇 踏み心地は柔らかく、リラックスしたムードを演出するのに最適です
▲ 階段などに使うと、角の部分が割れてしまいます
・ループパイル
毛足がタオルのように輪っか状でつながっているループパイルは、耐久性の高さが魅力です。へたりずらいので、人がよく集まる場所にも最適です。
汚れがつきにくいですが、カットパイルに比べると「遊び毛」の量は少ないので、一度ついた汚れは落ちにくいです。
〇 しっかりとした踏み心地で、さわやかな印象
▲ ジョイントはある程度目立ちます
▲ 柄に方向性が出るため、敷き込みの方向に注意が必要です
〇 ごみタンク容量が小さいロボット掃除機をご使用の方はこちらがおすすめです
・カット&ループパイル
カットパイルとループパイルの両方のいいとこどりをしたタイプで、それぞれの中間の特徴をもっています。
デザイン的にもインテリア性が高いのが特徴です。
ホテルのような高級感のある空間に仕上げたい場合は、カット商品がおすすめです。高級ホテルのほとんどがカット商品になっている理由は、メンテナンス性に優れ、非日常を演出しやすいためです。
フローリングの印象に近いカジュアルな空間をつくりたい場合はループ商品が良いです。
カーペットを選ぶ際は、サンプルを実際に見て、触って、選んでください。
パイルの長さやカットの仕方によって、耐久性や見た目、肌ざわり足触りが異なります。
使いたい空間は、どんな使い方をするかを考えながら選ぶと、永く使えますよ。
おすすめの色
色は全体の空間に大きく影響するため、「この色がいいです!」というのは難しいですが、汚れが心配な場合は、やはり淡い色より濃い色の方が目立ちにくくなります。
実際に空間に敷き込むと、色はサンプルで感じたものよりも「淡く」感じます。
また、無地よりもいろいろな色が混ざった混色を選んでいただくと、かなり汚れは目立ちにくくなるので、「きれいに使わなきゃ」と気負いすぎずに付き合えると思います。
そして王道的なカーペットらしさがある商品は、カット商品です。毛足が短く密度感のある商品はへたりにくく、長くお使いいただけます。
もし、一部屋だけカーペットの床にするなら、くつろぎの暮らしを実感できるリビングをおすすめします。
ペットがいても大丈夫?
実は、ウールは大変消臭効果に優れた繊維です。
また、滑りやすいフローリングの床材はヘルニアを発症する危険があり、安全のためにもカーペットなどの柔らかい床材はペットにも優しい製品です。
ですが、やはり心配なのが粗相や嘔吐をした場合…。
基本的には汚れの取り方は上述したメンテナンス方法と同じです。
まずは乾いた雑巾で、できるだけ吸い取ってください。
その後は、お湯をかけ、乾いた雑巾で吸い取る、を5回くらい繰り返していただくと、アンモニアの成分は大分薄まります。
ウールカーペットとしては、表面の毛系が切れているカット商品をおすすめします。
ループ商品は、特にネコちゃんの場合は爪とぎにちょうど快適なようで、ほぼ必ずと言ってよいほど毛が飛び出てきてしまいます。
メンテナンスもカット商品のほうが汚れが落ちやすい(遊び毛が出やすい)ので、メンテナンスの観点からもカット商品が良さそうです。
仮にループ商品を選んで糸が飛び出てしまったら、その部分をはさみで切ってください。程度にもよりますが、多少切っても問題ないくらい、糸の量をたくさん使ってあります。※切るときは引っ張らないように気をつけてください。
天然繊維であるウール素材、そして柔らかい床・滑りにくい床、というのはペットにとっても快適な暮らしにつながります。
ウールカーペットのおすすめメーカー
おすすめは、老舗メーカーの堀田カーペットさん。
1962年大阪府和泉市で創業以来、イギリス発祥のウィルトン織機を使ったウールカーペットを一貫してつくり続けています。糸から開発できる企業としてその名を知られ、有名ブランドのブティックや高級ホテルの内装にも携わっています。
ウィルトン織機は「機械織り」ですが、「織工」と呼ばれる職人の技術が必要で、現在ウィルトンカーペットメーカーは、国内に数社、織機台数も20台程度しか稼働していません。しかし、ウィルトンカーペットは耐久性にすぐれ、織物でしか表現できないテクスチャーがあります。
また、様々な性能をもつウールも、密度が低いと本来の性能を発揮できません。
密度が低いとパイルはへたり、燃えやすくなり、保温性や調湿性も著しく低下してしまいます。反対に密度の高いカーペットは、毛の隙間にゴミが入りづらいため、表面に掃除機をかけるだけで美しく保つことができます。
床一面に敷き込み施工するカーペットは、ラグのように簡単に敷きかえできないので、長い年月を経ても、美しく使える物である必要があります。
堀田カーペットは、耐久性だけではなく「長く美しく使っていただく」ための製品づくりにこだわられています。
まとめ
天然ウールの自然な温もりは、四季を通じて心地よく体を受け止めてくれ、寝転んで本を読むのも、そのまま居眠りするのも自由です。
毎日掃除機をかける手間はありますが、気張らずに受け入れることで、圧倒的な踏み心地の良さと床に座る暮らしを楽しめる良い床材です。
ぜひ様々な床材をご検討する際に、ごろんとできる柔らかい床というウールカーペットも、選択肢の一つとして持っていただくのもいかがでしょうか。