新築住宅の固定資産税をラクに計算!必要な情報を徹底解説
2025. 09. 05 | 家づくりガイド |
家を持てば必ず発生する固定資産税。
しかし制度は複雑で、「いくらになるの?」「軽減措置ってなに?」「納付の流れは?」と疑問を抱えたまま、通知書を待つしかない…という方も少なくありません。
本記事では、固定資産税の仕組み、建物や土地の評価額の決まり方、軽減ルール、都市計画税との関係、さらには納付の流れや支払い方法まで、すべてを体系的に整理しました。
固定資産税は「難しい税金」ではなく、ルールさえ理解すれば誰でもシンプルに把握できるものです。この記事を参考に、制度を正しく活用し、無理のない住まいの維持を実現しましょう。
≪この記事を読んでわかること≫
・固定資産税は 「評価額 × 1.4%」 を基本に算出される
・新築住宅は最大120㎡に対して、一般住宅で3年間・長期優良住宅で5年間の軽減措置がある
・評価額は工事請負金額ではなく、各自治体が「再建築価格方式」で計算する
・土地には恒久的な軽減(小規模住宅用地6分の1、一般住宅用地3分の1)があり、税負担を大幅に減らせる
目次
- 1. 1. 固定資産税の基礎知識 1-1. 固定資産税とは何か?
- 2. 1. 固定資産税の基礎知識 1-2. 新築住宅における課税の特徴
- 3. 1. 固定資産税の基礎知識 1-3. 土地と建物、それぞれの課税対象
- 4. 1. 固定資産税の基礎知識 1-4. 課税の流れと評価のタイミング
- 5. 2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-1. 対象となる住宅の条件をチェック
- 6. 2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-2. 新築住宅用地に対する優遇措置
- 7. 2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-3. 軽減期間終了後の注意点
- 8. 2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-4. 軽減措置を受けるための手続き
- 9. 3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-1. 必要な情報と資料を集めよう
- 10. 3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-2. 建物の評価額はどう決まる?
- 11. 3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-3. 土地の評価額とその算定方法
- 12. 3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-4. 計算式に当てはめてみよう
- 13. ◎建物評価額の目安
- 14. ◎固定資産評価額と実際の建築請負金額の違い
- 15. ◎都市計画税の目安
- 16. ◎土地の固定資産税の目安
- 17. 3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-5. 計算のポイントと注意点
- 18. 4. 固定資産税の納付と通知の流れ 4-1. 納税通知書の到着と支払い方法の選び方
- 19. 4. 固定資産税の納付と通知の流れ 4-2. もし納付に遅れたらどうなる?
- 20. 5. その他の住宅にかかる維持費・管理費
- 21. まとめ
1. 固定資産税の基礎知識 1-1. 固定資産税とは何か?
固定資産税とは、土地や建物などの不動産に対して毎年課される地方税のことです。毎年1月1日時点での不動産の所有者に対して、市区町村が課税主体となって徴収します。税金の使い道としては、自治体の行政サービス(道路整備、ごみ処理、教育など)の財源となっており、地域インフラの維持と運営に欠かせない存在です。
対象となるのは「固定資産」と呼ばれる資産で、そのうち最も一般的なのが土地・家屋(建物)です。なお、償却資産(事業用の設備や機械など)も対象に含まれますが、この記事では住宅に関係する土地・建物の課税について解説します。
固定資産税の税額は、「課税標準額 × 税率」というシンプルな計算式で算出されます。標準税率は全国一律で1.4%とされています。(※一部自治体は条例により変更がありますが、神奈川県内で「1.4%以外」の市町村は現時点では確認できません)
住宅に対しては、一定の軽減措置が設けられており、新築住宅や長期優良住宅などは一定期間、税額が軽減される制度があります。これにより、税負担を抑えながらマイホームを維持できる仕組みになっています。
固定資産税は毎年発生するランニングコストのひとつであり、住宅ローンの返済と同様に、長期的な支出として見込んでおくことが大切です。購入時だけでなく、住み始めた後の維持費を見据えた資金計画が、安定した暮らしには不可欠です。
1. 固定資産税の基礎知識 1-2. 新築住宅における課税の特徴
新築住宅を建てると、固定資産税には特別な軽減措置が適用されます。これは、住宅取得時の税負担を軽減し、家を建てやすくするための支援策です。特に初めて住宅を取得する方にとっては、大きな節税効果があるため、制度の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
軽減措置の対象となるのは、新築された住宅の建物部分です。土地には別の軽減制度が適用されますが、ここでは建物に関する軽減について説明します。
住宅の固定資産税は、建物評価額に対して税率1.4%がかかりますが、新築の場合は一定期間その半分である0.7%の税率に軽減されます。
この軽減が適用される期間は、一般の新築住宅で3年間、長期優良住宅で5年間です。
例えば、評価額が2,000万円の場合、通常は年間28万円の税金がかかるところ、軽減期間中は14万円で済みます。この差額は数年単位で見ると大きく、軽減制度の有無が家計に与える影響は非常に大きいといえます。
ただし、この軽減措置が適用されるにはいくつかの条件があります。
まず、住居として使用される建物であることが前提です。また、床面積が50㎡以上280㎡以下である必要があり、これを超えると軽減が受けられません。さらに、軽減対象となるのは1戸あたり120㎡までという上限があるため、延床面積が120㎡を超える部分には通常税率1.4%がかかります。
例えば、150㎡の住宅を新築した場合、最初の3年間は120㎡分が0.7%、残り30㎡分が1.4%で課税されます。このように、面積によって税率が分割される仕組みになっているため、課税面積と軽減範囲を正確に把握することが大切です。
この軽減措置は自動的に適用されるのが原則ですが、長期優良住宅の認定を受けた場合は、軽減期間延長のために自治体へ申請が必要です。認定通知書などを添付して「新築住宅に係る固定資産税減額申告書」を提出すると、5年間軽減が受けられるようになります。自治体により提出期限や必要書類が異なるため、建物完成後は早めに確認しましょう。
なお、一般の新築住宅(3年間軽減)の場合は、自治体が登記情報をもとに自動的に適用するのが一般的ですが、内容に誤りがあれば修正申告が必要です。納税通知書を受け取った際に、軽減が反映されているかを必ず確認することが重要です。
このように、新築住宅の固定資産税には非常に有利な制度が整っている一方で、条件や面積、申請タイミングなどを見落とすと満額課税されるリスクもあります。家を建てる段階から税金の仕組みにも目を向けておきましょう。

1. 固定資産税の基礎知識 1-3. 土地と建物、それぞれの課税対象
固定資産税は、土地と建物のそれぞれに対して別々に課税されます。つまり、1つの住宅を所有していても、土地と建物の評価額が個別に算出され、それぞれに税率が適用されます。これにより、合計の税額は「土地の税額」+「建物の税額」という形になります。
土地については、用途によって評価方法が異なりますが、住宅用地であれば一定の軽減措置が受けられます。特に、200㎡以下の「小規模住宅用地」は、課税標準額が6分の1に軽減され、200㎡を超える部分については3分の1に軽減されます。この軽減は住宅が建っている限り継続されるため、建物のような年数制限はありません。
一方、建物(家屋)は、「再建築価格方式」に基づき評価されます。これは、同じ建物を今建て直した場合にかかる費用をベースに評価額を決める方式で、建築時の仕様や面積、構造などが大きく影響します。これは、単純に「建築費=評価額」となるわけではなく、国の基準に沿った細かい積み上げ計算によって決まります。
また、建物は年数の経過とともに評価額が下がるため、築年数が古くなるほど課税額も少なくなる傾向があります。
ただし、新築時には軽減措置があるため、築4年目以降(長期優良住宅では築6年目以降)に税額が上がるという点に注意が必要です。軽減期間終了後は、本来の評価額に対して1.4%の税率が適用されるため、税額が倍近くに増えるケースがあります。
1. 固定資産税の基礎知識 1-4. 課税の流れと評価のタイミング
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税されます。この日を「賦課期日(ふかきじつ)」といい、その時点で土地や建物を所有していれば、その年の税金を納める義務が生じます。たとえ1月2日に売却しても、その年の税金は前所有者の負担になります。
固定資産税の評価額は、市区町村が行う「評価替え」によって見直されます。通常は3年に1度の評価替えが行われ、土地や建物の価格変動が反映されます。
ただし、新築住宅の場合は、建物が完成した時点で市区町村による調査が入り、その情報をもとに初年度の評価額が個別に決定されます。この初年度評価額を基に、軽減措置が適用されるかどうかも判断されるため、正確な申告や確認が重要です。
評価額は、建物の構造(木造・鉄骨造など)や仕上げの仕様(外壁材、床材、窓ガラスの種類など)によっても異なります。特に、高気密・高断熱仕様、太陽光発電、蓄電池などの高性能設備がある住宅は、評価額が高くなりやすい傾向があります。
このように、固定資産税の課税は「1月1日所有者」「評価替えの時期」「新築時の調査」といった複数のタイミングによって決まっていきます。納税額に直結するため、所有時期や建築時期に関する正確な理解が、税額を予測する上で欠かせません。

2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-1. 対象となる住宅の条件をチェック
新築住宅の固定資産税 軽減措置を受けるためには、いくつかの明確な条件を満たしている必要があります。
最も基本的な条件は、自己の居住用であることです。つまり、居住実態があることが必要で、別荘やセカンドハウス、空き家状態のままの住宅などは原則として対象外です。登記上は新築でも、実際に住んでいなければ軽減措置は適用されません。
次に重要なのが床面積の条件です。戸建て住宅の場合、50㎡以上280㎡以下であることが必須です。この条件を満たさないと、いかに立派な住宅であっても軽減措置は受けられません。
また、併用住宅(店舗や事務所との併設)の場合には、住宅部分の床面積が全体の1/2以上であることが条件となります。たとえば、1階が店舗・2階が住宅というような建物でも、住宅部分の占める割合が高ければ軽減措置の対象になる可能性があります。ただし、用途の確認は自治体の審査が必要です。
さらに、登記のタイミングも重要です。新築登記が完了していなければ、固定資産台帳に登録されず、軽減措置の手続きが進みません。建築完了後は速やかに建物登記を済ませることが大切です。
以上のように、新築住宅の軽減措置には複数の要件が設けられており、1つでも漏れると対象外となる可能性があります。設計段階から条件を意識しておくことで、建築後に慌てずに済むでしょう。
2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-2. 新築住宅用地に対する優遇措置
固定資産税の軽減措置は建物だけでなく、「土地(住宅用地)」にも適用されます。
住宅を建てる目的で使用されている土地は、「住宅用地」として特例評価の対象となり、税負担が大きく軽減されます。これは、新築に限らず、すでに住宅が建っている土地にも共通して適用される制度です。
具体的には、「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」の2つに区分され、それぞれに軽減割合が異なります。
小規模住宅用地とは、住宅1戸につき200㎡以下の部分を指し、その部分の課税標準額は6分の1に軽減されます。一方、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は3分の1に軽減されます。
例えば、敷地面積が250㎡で戸建て住宅が1戸建っている場合、200㎡は6分の1、残りの50㎡は3分の1の軽減が適用されます。
この優遇措置を受けるためには、住宅が登記されており、実際に居住していることが原則です。また、住宅が複数戸ある場合や、土地が共有名義である場合は、戸数ごとに按分された面積で判断されます。そのため、二世帯住宅や賃貸併用住宅の場合は、計算がやや複雑になることもあります。
注意点として、土地の軽減措置は建物の軽減とは異なり、期間の制限がなく恒久的に適用される点が特徴です。ただし、住宅の用途が変更されたり取り壊された場合には、住宅用地としての特例が解除され、通常の税率が適用されるため、変更があった際は速やかに自治体に届け出る必要があります。
2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-3. 軽減期間終了後の注意点
固定資産税の軽減措置は、新築住宅にとって大きなメリットですが、軽減期間が終了すると突然税額が跳ね上がるという側面もあります。長期優良住宅の場合は5年間、一般の新築住宅でも3年間という期間限定の措置であり、それ以降は建物全体に通常税率 1.4% が適用されます。
多くの方が見落としがちなのは、軽減終了後の固定資産税の増加額が、年間で数十万円に及ぶ可能性があるという点です。特に評価額が高めの注文住宅や長期優良住宅の場合、軽減措置によって抑えられていた部分が一気に戻るため、家計への影響が大きくなります。
軽減終了後の税額に備えるためには、軽減措置を受けている間から資金計画を立てておくことが重要です。例えば、軽減措置で浮いた分の税金を「積立」しておくことで、軽減終了後の負担に備えることができます。また、定期的に税額の見直しをする習慣をつけることも、将来的なトラブル回避に繋がります。
たとえば、家屋評価の見直し請求(不服申立て)などの手段もありますので、知識を持つことで、税額を抑えるための方法がないかを検討することも有効です。
また、固定資産税の評価額は 3年ごとに一斉に見直し(評価替え) が行われます。軽減終了と評価替えが重なると、税額がさらに上昇することもあります。評価替えのタイミングを把握し、その年の前後で支出を調整するなどの工夫も効果的です。
※直近では 令和6年度(2024年度) が評価替えの年でした。次は令和9年度(2027年度)になります。
このように、軽減措置は一時的な優遇制度であるため、終了後の「反動増」への備えが非常に重要です。これから家を建てる方や購入する方は、軽減期間だけでなく、その後のランニングコストにも目を向け、賢く住宅を維持していく意識が求められます。
2. 新築住宅に適用される軽減措置とは 2-4. 軽減措置を受けるための手続き
固定資産税の軽減措置は、自動的に適用されるわけではなく、原則として所有者による申告手続きが必要です。特に新築住宅に関しては、建物の完成・登記後に自治体へ所定の書類を提出しなければ、軽減措置が適用されないケースがあるため注意が必要です。
一般的に必要な書類は、①「新築住宅に対する固定資産税の減額申告書」、②「建物登記簿謄本(全部事項証明書)」、③「住宅の平面図や立面図」、④「長期優良住宅の認定通知書(該当する場合)」などです。これらの書類を、市区町村の資産税課へ提出します。
提出期限は自治体によって若干異なりますが、多くは建物の新築から1~3か月以内に申告する必要があります。期限を過ぎると、軽減措置が受けられなくなることがあるため、早めの準備と確認が重要です。登記完了後は速やかに自治体の公式サイトや窓口で必要書類をチェックしましょう。
なお、軽減措置の適用が決定すると、翌年度以降の「納税通知書」に軽減額が反映されます。適用されていないと感じた場合は、通知書の内容をよく確認し、資産税課に問い合わせましょう。家屋調査の結果や面積の計算ミスが原因となっていることもあるため、早期の対応が重要です。
このように、軽減措置を正しく受けるためには、申告期限を守ること、必要書類を揃えること、自治体ごとのルールを確認することが不可欠です。せっかくの優遇制度を逃さないためにも、建築計画段階から準備を進めておくことが理想的です。
次章では、実際に固定資産税を計算するステップを詳しく見ていきます。

3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-1. 必要な情報と資料を集めよう
固定資産税の税額を自分で概算するには、いくつかの基本情報や資料が必要です。自治体から届く納税通知書を待たなくても、事前におおよその税額を知ることで資金計画が立てやすくなり、軽減措置の影響などもシミュレーションしやすくなります。
まず必要となるのは、「建物の固定資産評価額」です。これは市区町村が家屋調査などをもとに決定しますが、建物の構造や延べ床面積、使用している資材、住宅性能などからおおよその再建築価格を算出し、それが評価額となります。
次に必要なのが、「土地の固定資産評価額」です。土地については、評価額が3年ごとに見直されるため、過去に発行された納税通知書や、自治体の資産税課に問い合わせることで金額を把握できます。また、土地の用途(住宅用地かどうか)に応じて、6分の1や3分の1の軽減措置が適用される点も重要です。
そのほか、都市計画税(最大0.3%)は市街化区域内にある住宅に追加で課税されるため、該当する場合はその税率も調べておく必要があります。
(※神奈川県内では、現時点ですべての自治体で0.3%を採用しているようです)
3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-2. 建物の評価額はどう決まる?
建物の固定資産評価額は、「再建築価格方式」に基づいて算定されます。これは、評価の対象となる建物と同じものを、評価時点で新築した場合にかかると見込まれる建築費(再建築価格)をもとに算出する方法です。
再建築価格は、建物の構造(木造・鉄骨造・RC造など)、延べ床面積、間取り、屋根・外壁の仕上げ材、設備機器などをもとに、国の「固定資産評価基準」に従って評価されます。これにより、建物のグレードが高いほど評価額も高くなる傾向にあります。
新築住宅の場合、完成直後の評価額が最も高く、その後の経過年数に応じて3年ごとの評価替えで減額されていくのが一般的です。
評価額の計算は、市町村の職員による「家屋調査(※1)」をもとに行われます。新築住宅が完成すると、資産税課の担当者が現地を訪問し、間取りや仕様、建材の種類、設備の有無をチェックします。この情報をもとに、各部材ごとの評価単価を積み上げて、最終的な再建築価格を算出します。
評価額は、同じ延べ床面積の住宅であっても、使用される素材や性能によって大きく変わります。例えば、断熱性能が高く太陽光パネルを備えたZEH住宅は、一般的な建売住宅に比べて評価額が高くなる傾向にあります。
(※1:家屋調査は現地調査が基本でしたが、コロナ禍に感染拡大防止のため、多くの自治体で調査員の立ち入りを控える・短時間化するなどの対応がとられました。現在は多くの自治体で現地調査が再開されていますが、内部調査を省略するケースもあり、「図面提出+外観調査」のみで、必ずしも室内に入らないケースも多いようです。)
3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-3. 土地の評価額とその算定方法
土地の固定資産税も建物と同様に、「評価額」をもとに算出されます。
土地の評価額は、市町村が定める「固定資産評価基準」に基づき、原則として「地目」「利用状況」「形状」「接道条件」などを踏まえて個別に決定されます。
評価額の基礎となるのが「路線価方式」です。これは、道路に面した土地1㎡あたりの価格(路線価)に土地面積を掛けて評価額を算出する方法で、主に市街地や住宅地で用いられます。郊外や山間部では、近隣の取引事例を参考にする「標準宅地比準方式」が用いられることもあります。
住宅用地の場合、「小規模住宅用地」として200㎡以下の部分は課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分は「一般住宅用地」として3分の1に軽減されます。
実際の土地評価額も、3年ごとに見直される「評価替え」の年に調整されます。土地の評価額は、建物と違って「築年数による減価」がないため、地価の変動が税額に直結します。住宅取得時はもちろん、将来的な地価動向や用途変更などにも注意を払いながら、資産価値と税負担のバランスを意識することが大切です。
3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-4. 計算式に当てはめてみよう
固定資産税の税額は、建物と土地それぞれの評価額に基づいて「課税標準額 × 税率(1.4%)」で計算します。これに加え、土地には住宅用地の軽減、建物には新築住宅の軽減措置が適用される場合があり、それらを正確に計算に反映させることで、実際の税負担をより正確に把握できます。
◎建物評価額の目安
① 再建築価格の算出
建物の構造(木造・鉄骨造・RC造)、延床面積、間取り、設備、仕上げ材などを基に、国が定める単価表から再建築価格を算出します。
※2024年前後の一般的な目安(実際は自治体が基準に基づいて細かく設定します)

国の「固定資産評価基準」に基づく住宅用の単価表(抜粋イメージ)
この単価目安は、次のような要素によってさらに変動します。
・仕上げ材:外壁、床材、窓ガラスの種類など。高性能ほど高評価。
・最新設備:太陽光発電、蓄電池、床暖房などが加算要因。
・高性能:高断熱・高気密・ZEH仕様など断熱性や耐震性などが高い場合、評価額も高くなる傾向。
・高級仕様:外壁タイル貼り、無垢材フローリング、大型窓ガラスなども評価額が高くなる傾向。
これらの仕様の住宅は、同じ延床面積でも評価額が高くなる傾向にあり、「延床面積=評価額」ではなく、「仕様や性能=評価額」であることを理解することが大切です。
② 経年減点補正の適用
建物は年数が経つと劣化していくため、「減価率(経年減点補正率)」が適用されます。新築時は100%ですが、築年数が経過するごとに割合が下がり、評価額も減少していきます。
新築:100%
10年:約70〜75%
20年:約50〜60%
30年以上:約30%前後
③ 需要・形状補正
需要が少ない特殊用途住宅や、形状が標準と異なる場合に補正。
例:店舗兼住宅、地下室付き住宅など。
④ 最終評価額の決定
上記を踏まえて固定資産課税台帳に登録。これが固定資産税の基準となる評価額です。
よって、新築時の建物評価額は次の計算式で算出されます。
評価額 = 再建築価格 × 減価率(経年減点補正率) × 各種補正
新築時は経年による減価がないため、再建築価格 ≒ 評価額となります。
●計算例1-木造2階建て・延床面積100㎡の一般住宅の場合
延床面積 :100㎡(約30坪)
再建築単価(木造標準住宅):15万円/㎡ と仮定
再建築価格 :100㎡ × 15万円 = 1,500万円
経年減点補正 :新築のため100% → 評価額は1,500万円
固定資産税(標準税率1.4%):1,500万円 × 1.4% = 21万円/年
軽減措置(一般3年間・長期優良住宅5年間):120㎡以下なので全て軽減対象
→ 1,500万円 × 0.7% = 10万5,000円/年
※年間10万5,000円の節税、 3年間では31万5000円(長期優良住宅なら5年間で52万5000円)の節税効果があります。
●計算例2-木造2階建て・延床面積150㎡の高性能住宅の場合
延床面積 :150㎡(約45坪)
再建築単価(木造高性能住宅):17万円/㎡ と仮定
再建築価格 :150㎡ × 17万円 = 2,550万円
経年減点補正 :新築のため100% → 評価額は2,550万円
固定資産税(標準税率1.4%):2,550万円 × 1.4% = 35万7,000円/年
軽減措置(一般3年間・長期優良住宅5年間):120㎡分は軽減対象で半額(0.7%)、30㎡分は通常課税(1.4%)
→ まず面積按分による評価額の内訳を出します。
評価額2,550万円 × (120/150) =2,040万円 が軽減対象、残りの2,550万円 × (30/150) =510万円 が通常課税となります。
これらにそれぞれの税率をかけて、課税額を計算します。
軽減対象部分:2,040万円 × 0.7% = 14万2800円、通常課税部分:510万円 × 1.4% = 7万1400円 となり、建物全体の固定資産税額は21万4,200円/年となります。
※年間14万2800円の節税、 3年間では42万8400円(長期優良住宅なら5年間で71万4000円)の節税効果があります。
※実際の評価額は、国の評価基準と市町村の家屋調査によって決まります。
◎固定資産評価額と実際の建築請負金額の違い
多くの方が戸惑うのが、「建築請負金額(工事費用)と固定資産評価額が一致しない」という点です。実際には、請負金額よりも評価額が低く算出されることが一般的です。
その理由は以下の通りです。
・固定資産評価基準の単価は全国一律の基準であり、市場価格(実際の工事費)より低めに設定されている
・請負金額には設計料、現場管理費、会社経費なども含まれている
・評価額はあくまで「建物の再建築価格」のみを反映するため、総工費=評価額にはならない
評価額は「課税の基準」として計算された金額であり、必ずしも実際の建築費や資産価値をそのまま反映しているわけではありません。納税通知書の評価額が請負金額より低いからといって「間違い」ではなく、制度上の正しい算定結果といえます。
◎都市計画税の目安
固定資産税とセットで課税されることが多いのが「都市計画税」です。市街化区域内に土地や建物を所有している場合に課される税金で、その税収は道路、公園、下水道などの都市基盤整備に使われます。
都市計画税の税率は、法律で上限が0.3%と定められており、多くの自治体ではこの上限いっぱいの0.3%が採用されています。たとえば、評価額1,500万円の住宅であれば、都市計画税は1,500万円 × 0.3% = 4万5,000円/年となります。
土地にも都市計画税がかかるため、総額はさらに増えます。
◎土地の固定資産税の目安
●計算例-土地220㎡(住宅用地)・固定資産税評価額 20万円/㎡の場合
①評価額を面積で按分
1㎡あたり評価額:20万円
小規模住宅用地(200㎡):200㎡ × 20万円 ≒ 4,000万円
一般住宅用地(20㎡):20㎡ × 20万円 ≒ 400万円
②課税標準額に軽減を適用
小規模住宅用地(200㎡):4,000万円 × 1/6 ≒ 667万円
一般住宅用地(20㎡):400万円 × 1/3 ≒ 133万円
合計課税標準額 ≒ 800万円
③税額計算
固定資産税:800万円 × 1.4% ≒ 112,000円
都市計画税:800万円 × 0.3% ≒ 24,000円
合計 ≒ 136,000円/年
※土地の固定資産税評価額は、主に 公示地価や路線価を基に算定されます。実勢価格(売買相場)の約70%程度が目安です。
3. 実際に固定資産税を計算してみよう 3-5. 計算のポイントと注意点
固定資産税の計算では、評価額や面積、適用される軽減措置を正確に理解しておくことが重要です。
特に建物については、軽減対象となるのは1戸あたり120㎡までであり、それを超える面積には軽減措置が適用されないため、計算時には面積を按分して扱うことが基本となります。
土地についても「住宅用地の特例」が適用されるかどうかで税額が大きく変わります。住宅が建っていない土地(更地)にはこの特例は適用されません。また、複数戸の住宅や二世帯住宅の場合、建物1戸ごとに小規模住宅用地の200㎡までが軽減対象になるため、戸数によっても取り扱いが異なります。
また、評価額と課税標準額の違いにも注意が必要です。固定資産税は評価額そのものではなく、各種の特例や軽減後の「課税標準額」に税率をかけて計算されます。そのため、評価額を見ただけでは最終的な税額がわからないケースもあるので、課税標準額に着目する意識が大切です。
さらに、計算時には都市計画税が別途加算されることを忘れてはいけません。固定資産税の軽減措置が適用されていても、都市計画税には原則として軽減がないため、事前に含めておく必要があります。
最後に、3年ごとの評価替えの影響も見逃せません。地価や建築コストの変動によって評価額が上昇すれば、軽減措置が終了したタイミングと重なって税額が大幅に増える可能性もあります。将来を見据えて複数年にわたるシミュレーションを行い、無理のない資金計画を立てることが大切です。
固定資産税は一度建てた住宅に長期間関わる税負担です。軽減措置を含めた制度の理解と、計算時の注意点を把握することで、安心してマイホームを維持・管理していくことが可能になります。

4. 固定資産税の納付と通知の流れ 4-1. 納税通知書の到着と支払い方法の選び方
固定資産税は毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税されます。その後、4月〜5月ごろに「納税通知書」が自宅に郵送されてきます。たとえば2025年1月1日時点で家を所有していれば、同年4月中旬〜5月上旬に自治体から通知書が届きます。
通知書には、固定資産税や都市計画税の内訳が記載された「課税明細書」が同封されています。土地と建物それぞれの評価額や、軽減措置の適用内容も確認できるので、軽減措置が正しく反映されているかチェックすることが重要です。
支払い方法は複数あり、自分のライフスタイルに合った手段を選ぶことがポイントです。従来型の方法としては、金融機関・郵便局・コンビニでの窓口納付があります。納付書を持参するだけで、簡単に支払うことができます。
口座振替(自動引き落とし)は、事前の手続きで自動的に納付されるため、納め忘れを防ぐうえで非常に便利です。特に共働き世帯や日中に窓口へ行く時間が取れない方におすすめです。
また近年では、スマートフォン決済アプリ(PayPay、LINE Payなど)を利用した支払いも一般的になってきました。納税通知書のバーコードを読み取るだけで、いつでもどこでも納付できるため、特に若い世代を中心に普及が進んでいます。
一部の自治体では、クレジットカード納付や電子マネー決済にも対応しています。ただし、クレジットカードでの支払いには手数料がかかる場合があるため、金額が大きい場合は慎重な判断が必要です。
いずれの方法を選んでも、納付期限を守ることが最も重要です。多くの自治体では、年4回の分割納付に対応しており、第1期は5月末ごろ、第4期は翌年1月末が納期限です。期限を過ぎると延滞金が発生する可能性もあるため、スケジュール管理を忘れずに行いましょう。
4. 固定資産税の納付と通知の流れ 4-2. もし納付に遅れたらどうなる?
固定資産税の納期限を過ぎてしまった場合、自動的に「延滞金」が発生する可能性があります。延滞金は原則として、納期限の翌日から課され、納付が遅れるほど金額が増えていきます。意図せず期限を過ぎた場合でも例外なく適用されるため、注意が必要です。
延滞金の利率は、納期限から1か月以内は年率2.5%、それ以降は原則として年8.7%(2025年時点)となっています。たとえば10万円の固定資産税を2か月遅れて納付した場合、延滞金は1,000円以上になる可能性があり、放置すると無駄な支出が発生してしまいます。
また、納税が長期間滞ると「督促状」や「催告書」が送付されます。それでも対応しない場合は、最終的に財産差押え(銀行口座・不動産・給与など)の法的手続きに進む可能性もあるため、早めの対応が必須です。
もし納付が難しい場合は、放置せずに自治体の資産税課に相談しましょう。事情を説明すれば、「納付の猶予」や「分割納付」の制度を活用できるケースもあります。支払い能力に応じて柔軟に対応してもらえる場合もあるため、まずは連絡を取ることが大切です。
特に、新築住宅を取得した直後は他の出費も多く、固定資産税の存在をうっかり忘れてしまうこともあります。納税通知書の内容と納期限をカレンダーに登録しておく、もしくは自動引き落としを利用するなど、事前の対策でトラブルを防ぎましょう。
固定資産税は住まいを所有する限り、毎年発生する重要な支出です。納付遅れによる延滞金や督促を避けるためにも、納期管理を徹底し、必要であれば自治体と積極的にコミュニケーションを取る姿勢が大切です。次章では、固定資産税と併せて考えたいその他の住宅維持費について見ていきます。
5. その他の住宅にかかる維持費・管理費
固定資産税や都市計画税に加えて、住宅を所有する上では定期的にかかる維持費や管理費も無視できません。これらは税金ではありませんが、住宅の価値を保ち、快適に暮らすためには必要な支出です。新築時には見落とされがちな部分なので、早めに把握しておくと安心です。
代表的な費用のひとつが「住宅のメンテナンス費用」です。たとえば、10年〜15年ごとに必要となる外壁塗装や屋根の補修、給湯器やエアコンなどの設備交換などが挙げられます。これらの費用は1回数十万円〜100万円を超えることもあり、積立てを前提とした計画的な管理が求められます。
また、長期優良住宅など性能の高い住宅でも、「定期点検と補修の義務」が課せられるます。長く快適に暮らすには、こうしたメンテナンス対応を前向きに捉える意識が必要です。
自治体によっては、「自治会費」や「町内会費」なども必要になります。ゴミ収集所の管理、地域行事の運営、防犯灯の設置など、地域の暮らしを支える重要な財源であり、数百円〜数千円/月が相場です。住まい選びの際には、地域コミュニティの仕組みにも注目しておくとよいでしょう。
住宅ローンを借りている場合には、火災保険や地震保険の更新料も定期的に発生します。年払い・長期一括払いのプランもありますが、自然災害リスクの高まりから保険料は年々上昇傾向にあります。固定資産税と同様に、長期的なライフサイクルコストとして把握しておく必要があります。
このように、住宅所有には税金以外にもさまざまなコストがかかります。安心して長く暮らすためには、固定資産税と合わせて、毎年の維持費も「住まいの経費」として計画的に管理していくことが重要です。
まとめ
固定資産税は、住宅を所有するうえで毎年必ず発生する税金です。建物や土地の評価額に応じて課税されますが、新築や長期優良住宅であれば一定期間軽減措置を受けられるため、制度の内容を正しく理解しておくことで負担を大きく抑えることが可能です。
固定資産税のほかに、都市計画税や住宅の維持費・メンテナンス費用、保険料なども含めて考えると、住宅取得後のランニングコストは意外と多くなります。通知や納期限を把握し、支払い方法を自分に合った形で選ぶことも大切です。
今回の記事を通じて、固定資産税の基本から具体的な計算方法、納税の流れ、注意点までを幅広く解説しました。マイホームの維持には知識が必要です。税制度を味方につけて、無理のない住まいの管理を目指しましょう。
※参考リンク集(公式情報)
固定資産税や評価額の詳細は、各自治体の公式ページで確認できます。お住まいの地域やこれから住宅を建てる予定の地域の情報をぜひチェックしてみてください。