天井を彩る!よしベニヤの魅力と使い方
2025. 09. 11 | 家づくりガイド |
天井に選ぶ素材ひとつで、実は空間の“気配”は大きく変わります。
なかでも「よしベニヤ」は、光と陰影を美しくたたえる自然素材として、注目を集めている存在です。
建築家・横内敏人さんも、よしベニヤを天井材として積極的に取り入れていることで知られ、数々の住宅作品において、素材のもつ柔らかさや奥行きを最大限に活かしています。
本記事では、「よしベニヤとは何か?」という基本から、空間演出としての使い方、設計施工のポイント、そして実例紹介まで解説。和にも洋にもなじむ素材としてのポテンシャルを、具体的に掘り下げます。
天井に自然素材を取り入れることで、空間全体がやさしく整い、光・音・空気までもが柔らかくなる。そんな空間の変化を求める方にとって、よしベニヤは最適な選択肢のひとつになるはずです。
目立たないけれど、確かな存在感。よしベニヤで、天井からはじまる豊かさを体験してみませんか?
≪この記事を読んでわかること≫
●よしベニヤは、素材の陰影を映し出す自然素材で、天井に使うことで空間全体に奥行きとやさしい雰囲気をもたらす。
●和にも洋にもなじみ、多彩なデザイン表現が可能で、施工性も良く扱いやすい。
●建築家・横内敏人さんの事例にも見られるように、素材と光・空間を調和させることで、住まいに静けさと豊かさを生み出すことができる。
1. よしベニヤとは──自然素材と工業技術の融合から生まれた建材
よしベニヤとは、日本の湖沼や河川の水辺などの湿地帯に自生する「葦(よし)」をすだれ状に編み、基材にラワンやシナベニヤを用いた1820×910版の突板合板で、施工性と耐久性に優れています。
葦は古来より、日本家屋の壁や屋根材などに使用されてきた伝統素材で、軽量かつ通気性の高い特性を活かして、現代建築にもなじむ建材として再評価されています。自然素材のあたたかみを現代の空間に取り入れたいというニーズにぴったりの素材です。

LDK奥の畳コーナー天井にサツマのヨシベニヤを使用した「翆雨の家」。温かみのある優しい雰囲気の空間となりました。
2. 天井に使うことで広がる、陰影と奥行きの美しさ
よしベニヤの天井は、光によって表情が変わる素材です。葦の細かな繊維がつくる自然な凹凸が、照明や太陽光の角度によって陰影を生み、時間帯によって空間の印象が変化します。
とくに間接照明との相性がよく、穏やかな雰囲気をつくり出します。白いクロスでは出せない、自然素材ならではの奥行き感が空間全体にやさしく広がります。

横内敏人さん設計の、京都の和食店舗「丹」の2階スペース。社員研修旅行の際に貸し切りさせて頂きじっくりと拝見した際のワンショット。素材の凹凸が穏やかな陰影として立ち上がり、包まれるような安心感が得られます。
3. 和にも洋にもなじむ、よしベニヤのデザイン適応力
よしベニヤは和風住宅に限らず、日本の伝統的な美意識と北欧の機能的で温かみのあるデザインを融合させた「ジャパンディ(Japandi)」スタイルにもよく合います。
たとえば、よしベニヤと無垢フローリング、左官壁などの自然素材で仕上げた空間は、シンプルでミニマルなデザインの家具との相性も良く、包まれるような落ち着いた空間に仕上がります。
また、リビングやダイニングの天井にアクセントとして使うと、家族が集う場所としての“中心性”が強調され、自然に人が集まる空間を演出できます。
よしベニヤは、直線的なデザインと自然の素材感が融合し、「和風」か「洋風」かを選ばせるのではなく、二つの良さを調和させる橋渡しの素材として働き、多様なライフスタイルにフィットします。
4. 設計・施工の観点から見る、扱いやすさと注意点
よしベニヤは軽くて加工性も高いため、施工が非常にしやすい素材です。新築はもちろん、リフォームや部分張り替えの場面でも取り入れやすく、コストパフォーマンスにも優れています。
ただし、天然素材ゆえに水や湿気には弱い性質があります。脱衣所や水回りなどの高湿度空間での使用は避けるべきで、主にリビングや和室、寝室などの乾燥した空間での使用が適しています。
耐久性を高めるためには、クリア塗装や自然オイルによる仕上げを施すのが効果的です。ツヤを抑えた塗装を選ぶことで、素材の風合いを損なわずに保護が可能となります。
5. 建築家・横内敏人さんの設計に見る、よしベニヤの活かし方
自然素材の魅力を活かした住まいづくりで知られる建築家・横内敏人さんも、よしベニヤを天井材として多くの住宅に採用しています。その設計には、素材を「飾る」のではなく「空間に溶け込ませる」哲学が息づいています。
低めに抑えた天井と光の設計によって、自然な陰影が空間に静けさと広がりを与えています。
このような事例は、素材と空間、光と構造の関係性を丁寧に設計することの大切さを教えてくれます。単に自然素材を使うのではなく、それが空間の中でどう響き合い、どう使い手の感覚に働きかけるのか。横内さんの実践から、多くのヒントが得られます。

横内敏人さん設計「呉羽の家」。 北建でも採用の多い竹六商店さんのよしべニアで仕上げられています。 出典:竹六商店カタログより
6. 心地よさを生む「天井素材」という選択肢
天井は常に視界に入りながらも、床や壁に比べて意識されにくい部分です。しかし、よしベニヤを天井に採用することで、空間に自然素材ならではの温かみが加わり、住む人の気持ちまで穏やかにしてくれる力があります。
葦の繊維構造にはわずかな吸音性があり、よしベニヤを使うことで室内の反響音がやわらぎます。話し声や音楽が心地よく響く空間を生み出す効果も期待できます。
時間とともに色合いが落ち着き、経年変化によって深まる美しさもまた、よしベニヤの魅力です。年月をかけて、家と共に素材も成熟していく。その過程も、住まいの価値として感じられる素材です。
まとめ──天井に、やさしい素材という選択を
よしベニヤは、ただの「仕上げ材」ではありません。空間の気配や心地よさを、静かに、でも確かに支える存在です。天井に自然素材を使うという発想は、床や壁とは異なる視点で住まいを見直すきっかけにもなります。
和の趣と現代性を併せ持ち、空間に奥行きとやさしさをもたらすよしベニヤ。施工性にも優れ、意匠的にも幅広いスタイルにフィットするこの素材は、「住む人の感覚に寄り添う建材」といえるでしょう。
天井から始まる住まいの豊かさも意識してみてください。
9/21(日)「閑日の栖(かんじつのすみか)」完成見学会 in 逗子市久木
- 日程
- 2025年09月21日(日)
- 時間
- AM9 : 00 ~
- 場所
- 逗子市久木
- 備考
- 炉をしつらえた茶道のお稽古ができる二階のモダンな和室に「よしベニヤ」を採用しています