平屋に住まう
2022. 10. 24 | 家づくりガイド |
平屋とは?
すぐにイメージできる方も多いと思いますが、平屋とは簡単に言ってしまうと「1階建ての住宅」のことです。
LDKや寝室などすべての部屋が同じフロアに収まり、階段による上り下りが無いというのが最大の特徴です。
今となってはデザイン性や暮らしやすさの観点から、若い世代・子育て世代にも人気が高まっています。
その一方で、ハードルが高くて平屋は建てられない…という声もよく聞きます。
さて、どちらの意見もある平屋にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、それぞれ整理してみましょう。
平屋のメリット
■暮らしやすさ①~家事編~
何と言っても階段が無くワンフロアでつながる平屋は、どの部屋に行くのもスムーズです。
家事の動線がよりシンプルになり、日常の負担を減ることにつながります。
例えば2階建てでよく見られるのが、1階で洗濯をして2階に干す、というタイプの間取りです。
経験がある方も多いと思いますが、濡れた洗濯物を持って2階に上がるというのはかなりの重労働。
息を切らしながら階段を上り切った瞬間、重さに耐えられず洗濯カゴをドンッ!と置いて、
ため息をついたことのある方も多いのではないでしょうか?
特にご年配の方や子育て世代で洗濯物が多い方にとって、日々の負担は相当大きなものになります。
しかし平屋であれば、同じフロアで洗濯物が干せるので移動距離も少なく負担が軽減します。
■暮らしやすさ②~バリアフリー編~
階段の上り下りが無いということは加齢により身体機能が低下しても踏み外しなどによる事故が防ぐことができ、
身体への負担も最小限になります。
これはご年配の方だけではなく、小さなお子さんがいる場合にも当てはまります。
水平方向の移動だけで完結する平屋の動線は、忙しい家事をこなしつつお子さんの様子を確認できたり、
階段からの落下の心配をすることなく生活できることができます。
常に危険と隣り合わせで、不安が付きまとう子育て。
少しでもこういった安心感があるだけで、心のゆとりを生んでくれます。
■家族とのコミュニケーションがより密に
2階が無い、ということはもちろん家族全員が同じフロアにいることになります。
それぞれが個室にいても、何となく気配を感じられたり、すぐ近くに家族がいるという安心感があります。
「家族」という特別な関係であるからこそ「近すぎず遠すぎず」の距離感を保つのは案外難しいものです。
そんな時、程よい距離感を保つ1つの手段が平屋なのです。
■自由な間取りのワンフロア
一般的なマンションも、階段が無くワンフロアの空間です。
しかし、大きな違いは「自由な間取り」にあります。
マンションの場合、どうしても水回りの位置が変えられなかったり、窓を増やすことができないため、
ある程度間取りが決まってしまいます。
一方、新築平屋の場合は自分たちの暮らしや周辺環境に合わせて一から間取りを決めていくことができます。
また自分たちだけの庭や空間を持つことができる、そんな魅力が新築平屋にはあります。
■メンテナンスコストの削減
長く住み続けるために定期的にかかってくるのが、メンテナンスコスト。
外壁や屋根の再塗装は5年~10年ごとに必要になります。2階建ての場合、高所での作業が必要となり
足場を組んでメンテナンスを行うため、とても大掛かりなものとなります。
一方、平屋の場合は建物の高さが低いため、足場の範囲が小さく済んだり不要になることがあります。
1度や2度のメンテナンスではないため、長期的な目で見るとメンテナンスにかかる費用は大きなものとなります。
平屋に限ったことではないですが、将来的にメンテナンスコストがどれほどになるか、
シミュレーションをしておくことがおすすめです。
■安定した構造
例えば地震が起きた時、高層ビルと平屋とではどちらが大きく揺れると思いますか?
みなさんがイメージした通り、高さのある高層ビルの方が大きく揺れます。
一般的に建物の重心が低いほど揺れにくく、地震に強くなると言われています。
その点、(間取りにもよりますが)1階しかない平屋は重心が低く、建物の重量も軽いため耐震性が高い
という特徴があります。
さらに平屋は2階建てよりも外壁の面積が小さく低いため、台風や強風の影響を受けにくいのが特徴です。
自然災害などですぐに屋外に出なければいけないときにも、平屋であれば家族全員すぐに逃げられるのも
メリットのひとつです。
平屋のデメリット
■広い土地が必要に
平屋はすべての部屋が1階にあるため、例え床の面積が同じでであっても2階建てと比べて広い土地が必要になる、
ということになります。
広い土地が必要ということは、土地代が高くなるということです。
土地から探される方はその分のご予算も考慮しておく必要があります。
また、あまり広くない土地に平屋を建てる場合、
採光や採風がしづらくなったり植栽や庭のスペースが取れなかったりと
「住み心地」の観点から不満が生まれることもあるので土地の選び方や間取りにも配慮が必要となります。
■建築費が多くかかる
平屋は2階を作らないのでその分コストも抑えられそう、というイメージをお持ちの方も少ないかと思います。
しかし、実はそうではないのです。
土地のお話と同じで、すべての部屋が1階にあるため当然2階建てよりも建築面積(敷地に対する建物の面積の割合)は大きくなります。
その分、基礎工事や屋根工事にかかる費用が大きくなっていきます。
もちろん階段やトイレ・2階の床が無い分コスト削減ができますが、それよりも基礎工事や屋根工事の方が
高くなる場合がほとんどで、2階建てより平屋の方が割高になる傾向にあるのは事実です。
■風通しや日当たりに配慮が必要
水平に間取りをつなげて構成される平屋は、建物が大きいほど中心部に光や風が入りにくくなります。
また高い建物に囲まれている敷地に平屋を建てる場合は、日射が遮られることがあるため特に注意が必要です。
日当たりや風通しの悪い住まいは身体に悪影響を及ぼすだけでなく、湿気によるカビの発生などにもつながります。
例えば、L型やコの字型の間取りにしたり、天窓を取り入れたりと様々な解決策がありますので
まず設計者に相談してみてください。
■プライバシーと防犯面に配慮が必要
平屋のメリットのひとつに「家族とのコミュニケーションがより密になる」とあげましたが、
裏を返せばプライベートの確保が難しい、ということになります。
LDKと同じフロアに個室があり、テレビの音や話し声、料理をする音が聞こえてしまう場合があります。
お子さんが受験期の時など、家族全員が気を使ってしまう、なんてこともあるかもしれません。
そのため廊下を介して個室にアクセスするなど、間取りに配慮が必要となります。
そして、平屋の場合は外からの視線が届きやすくなるためカーテンやフェンス、植栽で目隠しが必要となります。
また、夏場など暑いからといって窓を開けて寝ることは防犯上危険になるため難しくなります。
安全性確保のため防犯カメラを設置したり、踏むと音が出る砂利を敷いたり、
人がいることがわかるような対策をとることをおすすめします。
平屋ベースのすゝめ
今までメリット・デメリットをいくつかご紹介してきましたが、
ご予算や土地の問題で平屋を建てるのが難しい場合も当然あるかと思います。
そこで一つの解決策としてご紹介したいのが「平屋ベース」です。
1階部分は平屋をベースとして、子供部屋や納戸といったおまけの部屋を2階につくることです。
ただし2階に部屋があるとしても、基本的な構成や動線は平屋と同じです。
平屋ベースの魅力は、平屋の良い部分を取り入れつつ2階にもおまけの部屋を作ることで空間的に余裕ができること、
土地の面積が削減できること、
そして2階はおまけの部屋なのでライフスタイルに合わせて変化させられること、など様々です。
例えば、お子さんが成長し子供部屋が不要になったら、ご夫婦の趣味部屋にしたり
ゲストルームとして来客をもてなすスペースにするのはいかがでしょうか?
時間とともに暮らし方や家族構成は必ず変化していきます。
そんな変化に合わせて空間の使い方や人の居場所を変えていけることは、
これからの暮らしの愉しみに繋がりませんか?
まとめ
世代を問わず根強い人気を持つ平屋。そのメリット・デメリットをお話してきましたがいかがだったでしょうか?
少しでも住まいづくりのヒントになっていれば嬉しいです。
また平屋に限らずメリット・デメリットは必ずありますし、何を選ぶか迷われる方もいらっしゃると思います。
そこで大切にしていただきたいのが、
「自分たちのライフプラン」と「暮らしの中で一番大切にしたいことは何か」を明確にしておくことです。
そうすることで自分たちに何が必要か、どのような間取りにするか、ヒントが見えてくるはずです。
平屋のメリットを取り入れながら、自分たちの暮らしに合った住まいをご検討いただければと思います。