デメリットを理解して選ぶ!柿渋塗料の賢い使い方
2025. 06. 26 | 家づくりガイド |
木の香りがする無垢の床、自然のぬくもりを感じる壁や天井──そんな心地よい住まいを思い描いたとき、仕上げの塗料には何を選ぶべきか。
木材保護塗料としては蜜蝋やオスモなどが有名ですが、今回は、日本の風土に根ざした伝統塗料「柿渋」に注目。
柿渋の由来から基本的な使い方、実際に使う際の注意点、そして現代住宅との相性に至るまで、柿渋塗料を「選択肢の一つ」として賢く取り入れるためのポイントを解説していきます。
落ち着いた色味を好む方々に、柿渋の穏やかな風合いが選ばれているという点も見逃せません。自然素材だからこその安心感、経年による色の変化、空間に調和する色味──これらの魅力を知れば、柿渋が持つ可能性が見えてくるはずです。
家づくりやDIYにおいて、塗料を選ぶ視点が少し広がる。そんな一助となれば幸いです。
≪この記事を読んでわかること≫
●柿渋塗料は自然由来で安全性が高く、健康や環境に配慮した住宅に適している。
●落ち着いた風合いと経年変化による味わいが楽しめる塗料である。
●使用素材や環境に合わせた適切な使い方と施工法を選ぶことが重要。
●DIY初心者でも手軽に扱える一方で、他の塗料との相性には注意が必要。
目次
- 1. 1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ①柿渋の由来と成分:伝統素材としての背景
- 2. 1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ②柿渋塗料の用途と基本的な使い方
- 3. 1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ③柿渋塗料の独特な風合いと色味
- 4. 1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ④柿渋塗料と現代住宅との相性
- 5. 1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ⑤柿渋塗料のにおいとその対策
- 6. 2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ①自然由来だからこそ安心:身体へのやさしさと安全性
- 7. 2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ②防腐・防虫効果と木材保護性能
- 8. 2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ③経年変化を楽しむという価値観
- 9. 2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ④空間に馴染む色味と風合い
- 10. 2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ⑤多用途性と暮らしへの広がり
- 11. 3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ①適材適所で活かす柿渋塗料
- 12. 3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ②柿渋の塗装テクニックと仕上がりの違い
- 13. 3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ③DIYでも可能?初心者でもできる柿渋塗装
- 14. 3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ④柿渋を使う際の注意点とメンテナンス
- 15. 3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ⑤他の塗料との相性・重ね塗りの難しさ
- 16. まとめ
1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ①柿渋の由来と成分:伝統素材としての背景
柿渋とは、渋柿の果汁を自然発酵させて得られる伝統的な塗料・防腐剤です。日本では奈良・平安時代から使用されていたとされ、古来より建築や生活のさまざまな場面で活用されてきました。特に木材や紙、布などへの塗布によって防腐・防虫効果を発揮することで知られています。
その主成分は「タンニン」と呼ばれる植物性ポリフェノールで、この成分が木材に浸透し、化学的に変化することで自然な保護膜を形成します。これにより、腐食や虫害に対して木材を守り、さらに経年によって独特の風合いを生み出すのが特徴です。
時間の経過とともに色が深まっていくのも柿渋の特性で、塗布直後の薄い色合いから、日光や空気の影響によって茶褐色へと変化していきます。この色の変化は「劣化」ではなく「味わい」として受け入れられ、和の美意識と深く結びついています。
また、地域によっては漁網や和紙、和傘などにも用いられ、日常生活に根ざした万能素材として重宝されてきました。特に和傘や染め物に使われることで耐水性や強度を高める役割を果たしてきた点にも注目すべきでしょう。
近年では、化学物質を含まない自然素材への関心が高まり、環境に優しいエコ建材として再評価されています。見た目の美しさに加えて、健康への配慮や自然との調和を大切にした住まいづくりにおいて、柿渋は今なお活躍の場を広げています。

杉無垢フローリング、天井材の杉、杉の窓枠に柿渋を塗った「木彩の家」
1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ②柿渋塗料の用途と基本的な使い方
柿渋塗料の主な用途は、木部の保護と装飾です。日本家屋の外壁や柱、梁といった構造材から、家具、建具など室内のインテリアまで、幅広く使用されています。その自然な色調と風合いは、空間に落ち着きと品格をもたらします。
使い方は比較的シンプルで、ハケや布で塗布し、自然乾燥させるだけです。ただし、天候や湿度、気温によって乾燥時間が変わるため、施工のタイミングには注意が必要です。特に直射日光や強風を避けた穏やかな環境での作業が推奨されます。
塗布回数によって色や艶が変化します。1回塗りでは素朴な仕上がりに、2~3回重ね塗りすれば深みのある発色となり、同時に防水性や防腐性も高まります。好みに応じて塗り方を調整できる点が、柿渋塗料ならではの魅力です。
さらに、布や紙といった非木材素材にも使うことができ、柿渋染めとして親しまれています。色の経年変化を楽しみながら、素材そのものの耐久性を高める効果も期待できるため、のれんやバッグなどの雑貨制作にも利用されています。
1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ③柿渋塗料の独特な風合いと色味
柿渋塗料の最大の魅力のひとつが、その風合いと色味の変化です。塗布直後はやや赤みがかった薄茶色ですが、時間が経つにつれて徐々に深みを帯びた茶褐色へと変化していきます。このプロセスは、素材と空気、光との反応によって生まれるものであり、まさに「育つ塗料」といえるでしょう。
この色味の変化は、建物や家具に時間の流れを刻み込むような効果を与えます。人工的な塗料では得られない、奥行きのある自然な発色は、住まい手の感性やライフスタイルとも調和します。
また、光の当たり方や見る角度によっても微妙に表情が異なるため、空間に動きと温かみが生まれます。和室はもちろん、洋風インテリアの中にアクセントとして取り入れても違和感がなく、「落ち着き」と「個性」を同時に演出できるのが柿渋の魅力です。
仕上げ方法によっても印象は変わります。素朴なマット調に仕上げるもよし、蜜蝋や植物オイルと併用して自然な艶を加えるもよし。塗り方次第で様々な表現が可能であり、DIY愛好家や職人から高い支持を受けている理由のひとつです。
このように、柿渋塗料は単なる防腐剤ではなく、「風合いを楽しむための素材」として、暮らしの中で味わい深い表情を生み出してくれます。
1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ④柿渋塗料と現代住宅との相性
伝統的な素材である柿渋塗料は、現代住宅のデザインやライフスタイルとも十分に調和する可能性を持っています。
特に無垢材や左官仕上げなどとの相性が良く、ナチュラルな雰囲気を引き立てながら空間に落ち着きと深みを与える点が特徴です。モダンな設計の中にも、自然素材ならではの柔らかさを加えることができ、「温かみのある現代の和モダン空間」を演出するのに最適です。
また、柿渋塗料は防腐・防虫といった実用性も高いため、見た目だけでなく機能性の面でも現代の住宅性能と十分に合致します。天然由来で安全性も高いため、小さなお子様やペットがいる家庭にも安心して取り入れられる点も魅力です。
最近ではDIYユーザーや自然派志向の若い世代にも支持が広がっており、棚や椅子などの家具制作、内装のアクセント塗装など、多様な使い方が見られます。自分らしい住まいづくりを目指す人々にとって、柿渋は「選べる自然素材」として親しまれています。
柿渋塗料は単なる伝統的な塗料ではなく、現代の感性に寄り添う自然素材として新たな可能性を持った存在です。

杉無垢フローリング、造作家具のラワン材を柿渋塗装で仕上げている「風趣の家」。
ウォールナット材のダイニング家具とも落ち着いた色味でまとまります

目透かし貼りした天井のラワンベニヤも柿渋塗装仕上げ「風趣の家」
1. 柿渋塗料とは何か?自然素材の魅力と基本知識 ⑤柿渋塗料のにおいとその対策
柿渋塗料を使用する際に多くの人が気にするのが独特の発酵臭です。これは原料である渋柿を自然発酵させる工程に由来しており、醤油や納豆のような発酵系のにおいに例えられることが多いです。慣れない人にとっては強く感じられることもあります。
このにおいは塗布直後が最も強く、乾燥が進むにつれて徐々に軽減されていきます。通常、数日から1週間程度でかなり和らぎ、完全に気にならなくなるまでは2週間前後を見ておくと安心です。ただし、塗布量や気温・湿度によって消散の速度には差があるため、環境に応じた対策が必要です。
においが気になる場合は、塗布作業を風通しの良い屋外や換気の取れる室内で行うのが基本です。扇風機やサーキュレーターで空気を循環させたり、空気清浄機を併用することで、においのこもりを軽減することができます。
近年ではにおいを抑えた無臭タイプの柿渋塗料も登場しており、においに敏感な方や小さなお子様がいる家庭でも安心して柿渋を取り入れやすくなっています。
2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ①自然由来だからこそ安心:身体へのやさしさと安全性
柿渋塗料が注目を集めている最大の理由のひとつが、自然素材ならではの安全性の高さにあります。原料が渋柿という果実であるため、製造過程にも化学物質を一切使用せず、有害な揮発性有機化合物(VOC)もゼロ。そのため、小さな子どもやペットのいる家庭でも安心して使用できます。
アレルギーやシックハウス症候群のリスクを抑えたいというニーズが高まるなか、柿渋塗料はその代替となる貴重な存在として再評価されています。特に近年では、化学物質過敏症の方からの関心も高く、「塗料で健康に配慮する」という新しい住まいづくりの視点を提供しています。
また、施工時にマスクやゴーグルを装着する必要もなく、DIY初心者や一般家庭でも手軽に扱えるのが特徴です。施工後の乾燥中においても、有害なガスや強い刺激臭が発生することはなく、住空間を健やかに保つことができます。
無臭タイプの柿渋塗料が普及してきたことで、室内使用のハードルがさらに下がりました。従来の発酵臭に不安を感じていた方でも、快適に取り入れられる選択肢が増えたことは、大きな前進といえるでしょう。
現代の住まいに求められる「健康」「安心」「環境配慮」を同時に満たす選択肢として、これからも多くの場面で活躍することが期待されます。
2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ②防腐・防虫効果と木材保護性能
柿渋塗料の大きな特長のひとつが、優れた防腐・防虫性能です。これは柿渋に含まれるタンニンという成分が、木材内部に浸透して繊維と結びつき、腐敗菌や害虫の侵入を防ぐ天然のバリアを形成するためです。
湿気が多く木材が腐敗しやすい日本の気候において、柿渋の持つ防腐機能は非常に理にかなっています。また、シロアリなどの虫害にも一定の忌避効果があるとされ、床下や基礎周り、屋外の木柵などにも安心して使用できます。
化学系防腐剤とは異なり、柿渋は素材にやさしく、周囲の植物や土壌を汚染しない点でもメリットが大きいです。エコロジカルな庭づくりや、自然素材住宅のコンセプトとも非常に相性が良く、住まい全体の安心感を高める要素となります。
柿渋塗料は見た目の美しさだけでなく、素材の寿命を延ばす機能性にも優れた塗料です。
2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ③経年変化を楽しむという価値観
柿渋塗料の大きな魅力のひとつは、時間とともに変化する色合いや風合いにあります。塗布直後の淡い色味が、光や空気と反応しながら徐々に深みのある茶褐色へと変化します。
この経年変化は単なる劣化ではなく、味わいとして受け入れられる日本の美意識と深く結びついています。使い込まれた木材に宿る静けさや落ち着きは、人工的な塗装では決して得られないものであり、暮らしに時間の流れと物語性をもたらします。
特に、日当たりや湿度の異なる環境によって、微妙に異なる色の変化が生まれるため、ひとつとして同じ表情がない仕上がりになるのも魅力です。これにより、空間や家具がより個性的に、自分らしい住まいとして育っていく感覚を味わうことができます。
「新品よりも、使い込まれたものにこそ価値がある」という視点は、現代の消費スタイルに一石を投じるものでもあります。大量生産・大量消費ではなく、丁寧に暮らすことの喜びを、柿渋塗料はさりげなく教えてくれるのです。
日々の暮らしの中でその変化を見守ることで、住まいへの愛着や満足感も自然と深まっていくでしょう。


2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ④空間に馴染む色味と風合い
柿渋塗料は、その控えめで落ち着いた色味により、さまざまな空間に自然と馴染む特性を持っています。塗布後に現れる茶褐色や灰がかった色調は、素材の質感を引き立てつつ、空間全体に統一感と静けさをもたらします。
特に和の空間では、畳や障子、漆喰壁との調和が抜群で、日本建築の美意識に寄り添う素材として長年愛されてきました。一方で、洋風インテリアとの相性も良く、ビンテージ感やナチュラルテイストの演出にも活用されています。
柿渋特有の自然なマット感と艶を抑えた仕上がりは、照明の光を柔らかく受け止め、部屋全体に穏やかな印象を与えます。これにより、「視覚的な疲れ」を感じさせにくく、長時間過ごす空間に適しているといえるでしょう。
また、素材の表情を隠すことなく透かす仕上がりになるため、木目や繊維の個性を残したいときにも最適です。無垢材やラワン材など、ナチュラルな質感を生かしたインテリアとの相性も抜群です。
素材本来の魅力を活かしながら、住まい全体に調和をもたらす存在として、幅広い場面で取り入れることができます。
2. 柿渋塗料のメリットを正しく理解する ⑤多用途性と暮らしへの広がり
柿渋塗料は、木材だけでなく布や紙、革といった多様な素材に対応する汎用性の高さが魅力です。木製家具や建具だけでなく、和紙、のれん、バッグなどの日用品にも応用可能で、その用途は多岐にわたります。
たとえば、柿渋で染めた布は耐水性や強度が増し、のれんやトートバッグなどに加工しても実用性を兼ね備えた風合いあるアイテムに仕上がります。こうした「使える美しさ」は、現代のライフスタイルとも相性が良く、暮らしの中に自然素材の温もりを取り入れる手段として注目されています。
また、自然素材への関心が高まる中で、柿渋はサステナブルな生活を実現する素材として再評価されています。廃棄しても土に還る環境負荷の低さや、製造過程のエネルギー効率の良さなど、持続可能な暮らしに貢献できる要素が多く含まれています。

畳コーナーの収納扉は、柿渋染めされた江戸から紙を使用。柿渋を和紙に塗ることで強度が増し、防水性も高まるため耐久性が向上し、柿渋独特の風合いが深みと個性を加えるアクセントになります。「KINARI HUT」
3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ①適材適所で活かす柿渋塗料
柿渋塗料を効果的に活用するには、素材や用途に応じた「適材適所」の判断が重要です。すべての木材に万能というわけではなく、木の種類や使用環境によって発色や仕上がりが異なるため、事前に特性を把握することが成功の鍵となります。
たとえば、スギやヒノキなどの国産針葉樹は柿渋との相性が良く、特に外装材や構造材として使われる際には、高い防腐・防虫効果を発揮します。一方で、広葉樹やオイルを多く含む素材では、塗料の浸透が難しく、色ムラが出ることもあるため注意が必要です。
また、使用場所の環境条件も重要な要素です。屋外の場合は日光や雨風の影響を受けるため、柿渋だけで仕上げるのではなく、必要に応じて蜜蝋や天然ワックスなどで保護層を重ねることで耐久性を高める工夫が求められます。
屋内では、床や建具、家具への使用が一般的で、ナチュラルで温かみのある空間づくりに最適です。最近ではDIYリフォームでも多く用いられ、古材風の仕上げやエイジング加工を楽しむユーザーも増えています。
柿渋塗料を使う際は「どの素材に・どこで・どのように」使うのかを明確にし、それぞれの条件に応じた適切な施工を行うことで、素材の個性を最大限に引き出すことができます。ただ塗るのではなく、「素材と向き合う」姿勢が柿渋の魅力を活かす第一歩です。
3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ②柿渋の塗装テクニックと仕上がりの違い
柿渋塗料の魅力を最大限に引き出すには、塗装方法と仕上げの工夫が欠かせません。塗り方ひとつで、仕上がりの色味や質感が大きく変わるため、事前にサンプル材での試し塗りを行うことが非常に有効です。
基本的な塗布方法は、ハケや刷毛、布などを使って薄く均一に塗るスタイルです。1回塗りであっさりとした仕上がりに、2〜3回の重ね塗りでより深みのある色合いになります。塗布間には十分な乾燥時間を確保することが、ムラを防ぐポイントです。
また、表面の仕上げに蜜蝋ワックスやオイルを併用すると、控えめな艶と撥水性が加わり、より実用性が高まります。このような“二段仕上げ”は、家具やテーブル、フローリングなど日常使用の多い箇所で特に効果的です。
面白いテクニックとして、鉄媒染との併用でグレーや墨色のような色味を引き出す方法もあります。鉄とタンニンが反応することで化学変化が起こり、独特な重厚感のある色調に仕上げられます。
このように、柿渋塗料は塗り方次第で多彩な表現が可能な塗料です。決まったやり方に縛られず、自分の感性に合わせて試行錯誤しながら仕上げていく工程そのものが、ものづくりの楽しさを引き立ててくれるのです。

ラワン材で造作したキッチン。柿渋塗装にオスモ(クリア)塗装をプラスして、撥水効果を足しました「七彩の家」

洗面も同様にラワン材に柿渋+オスモ(クリア)塗装。カウンターはチェリー材で、色味も整います。
3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ③DIYでも可能?初心者でもできる柿渋塗装
柿渋塗料は、自然素材で扱いやすく、DIY初心者にも適した塗料です。必要な道具もハケや布、ビニール手袋など最低限で済み、特別な設備や知識がなくても始められる点が大きな魅力です。
塗布作業はシンプルで、木材の表面を軽く整えたあと、ハケなどで塗り広げるだけです。塗布量や回数によって色味が変わるため、好みに応じて調整できます。塗装後は直射日光を避け、風通しの良い場所で乾燥させると、美しく仕上がります。
実際に、DIYでラワン材に柿渋を塗装した事例では、コストを抑えながらも高級感ある仕上がりを実現できたという声が多くあります。ラワン材は価格も手頃で流通量も多いため、初めての柿渋塗装にぴったりの素材です。
また、家具のリメイクや内装のアクセント壁として柿渋を使うことで、空間に自然な温もりと落ち着きをプラスすることができます。失敗してもやり直しがしやすく、楽しみながらスキルアップできる点もDIY向きです。道具を揃え、自分のペースでじっくり取り組むことで、住まいへの愛着も自然と深まっていくはずです。

お施主様と柿渋をDIY塗装したラワンベニヤ。乾燥中です。

趣味の釣り道具小屋の内装に、上記のDIY柿渋塗装のラワンベニヤを使用しました「Lantern Hut」
3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ④柿渋を使う際の注意点とメンテナンス
柿渋塗料は魅力的な素材である一方、正しい使い方やメンテナンスの知識が必要です。まず、塗布前には素材表面の汚れや油分をしっかり落とすことが大切です。これを怠ると、色ムラや浸透不良の原因になります。
乾燥には時間がかかるため、天候や湿度に応じたスケジュール管理が重要です。特に梅雨時期などは乾燥が進みにくく、カビやにおいのこもりの原因になることもあるため、風通しの良い場所での施工が推奨されます。
塗布中に使用したハケや布は、すぐに水洗いし、できれば日干しで乾燥させるのが理想です。放置すると硬化してしまい再使用できなくなるため、施工後の後片付けも含めて丁寧な対応が必要です。
柿渋塗料を扱うには少し手間がかかる一面もありますが、その手間こそが素材と向き合う時間となり、住まいへの愛着や完成後の満足度に繋がっていきます。丁寧に手入れをすることで、長く美しさと機能を保つことができるでしょう。
3. 柿渋塗料を上手に使うための実践的アプローチ ⑤他の塗料との相性・重ね塗りの難しさ
柿渋塗料を使用する際に見落としがちなのが、他の塗料との相性や重ね塗りの難しさです。柿渋は天然成分が主成分のため、化学系の塗料やコーティング材と組み合わせた場合、色むらや硬化不良を引き起こすことがあります。
たとえば、柿渋を塗った上にウレタンやラッカーなどの合成塗料を重ねると、密着性が悪くなり、塗膜が剥がれやすくなるリスクがあります。逆に、柿渋を塗る前に既存の塗料が残っていると、発色や浸透に支障をきたすことがあるため、表面処理には十分注意が必要です。
このような問題を避けるためには、塗装前にサンドペーパーなどで既存塗膜を落とし、下地を整えることが重要です。また、必ず試し塗りを行い、素材と塗料の相性を確認するのが基本です。
さらに、柿渋塗料を使用する場合は「最初から柿渋で統一する」計画を立てることが成功の鍵となります。中途半端に別の塗料と併用したり、後から塗り替えを試みると、仕上がりの一貫性や素材の風合いを損なうことがあります。
このように、柿渋は他の塗料に比べて扱いがやや繊細ですが、事前の知識と準備をしっかり行うことで、トラブルを回避し、素材本来の美しさを活かす仕上がりが実現します。計画段階から素材と仕上がりのバランスを考え、全体を柿渋で統一する設計が理想です。
まとめ
柿渋塗料は、自然素材の魅力と実用性を兼ね備えた塗料として、古くから木材の保護や染色に用いられ、健康と環境への配慮が求められる現代においても、再評価されている存在です。
防腐・防虫といった機能性に加え、塗布後の経年変化による色の深まりが大きな魅力。和の建築に馴染むだけでなく、モダンな空間のアクセントとしても活用されるなど、空間の表情に奥行きを加えることができます。
柿渋を使用する際には、最初から「柿渋で統一する」前提で計画を立てることが重要です。異なる塗料との組み合わせによって仕上がりに不具合が出る可能性があるため、塗装前の計画と素材選定が成功の鍵です。
柿渋塗料は、ただの塗装材ではなく、「育てる素材」として魅力が増していく存在です。自然とともに暮らし、時間の流れを楽しむ。そんな丁寧な住まい方を求める人にこそふさわしい、奥深い素材だといえるでしょう。