第5回 自然素材 その二 (素材選びとは)
2014. 12. 05
前回では、自然素材についての考え方をお伝えしましたが、今回は皆さんが素材を選択する際のポイントについて具体的にお話したいと思います。誰もが無垢材や自然素材が手に入れられるならば当然のように「使いたい」と言われることでしょう。でもその素性や性能の巾をどれだけお分かりでしょうか?具体的に人気の素材を挙げて部材別に「落とし穴」がないか探ってみましょう。
塗り壁(珪藻土)
ここ数年は塗り壁が人気ですね。その中でも「珪藻土」は皆さんご存知のように調湿効果に優れていることから、今では自然素材の中では人気ナンバーワンと呼ばれる程になりました。
そして現在販売されている「珪藻土入り」の建材は40~50種類もあると言われます。ですがそれらはみな同じ性能を持っているわけでもなく、調湿性能がウリのはずの建材なのに何故か表面が結露するものもあります。それは残念ながら珪藻土をある程度入っていても、樹脂糊等を使って施工性を高めているために本来の調湿性能を持たないものが多く、大半は流行りに乗じて珪藻土を入れた珪藻土「入り」建材なのが現状です。
調湿や消臭性能のいかにも効きそうなグラフ曲線の表現方法や単位が「?」というのも少なくありません。その理由は「色むらや割れが出難く、そして塗りやすい」という「造り手」寄りの商品が多いのもこの素材の特徴でもあります。ですから出来る限り珪藻土含有量が体積比で高いものや化学糊が含まれてない珪藻土本来の性能が発揮できる商品をお勧めします。勿論効能がある分、色むらやひび割れが出る可能性は高くなりますが、何の為に「珪藻土」を使うのかを忘れないことが大切です。
また、仕上がりについてですが、商品や施工する左官業者によってもテクスチャーも随分と変わりますし、塗り壁は広い面積になるほどイメージも変わるものなので、施工実例や体験会を通して大きな塗り面積を直接自分の目で確認しておくことも大切です。
それから最初の時点であまり考えられませんが、珪藻土は一度仕上げたら基本的に塗り替えは必要ありません。当然補修もしやすいのでそれらがメリットの一つでもあるのですが、壁紙のように気分を変える為に張り替えることは出来ないので、その点を把握した上で決断することも忘れてはなりません。
無垢床材
健康素材では珪藻土と並ぶ二大看板のひとつですが、材種の見た目以外はどれも同じと思っている方も多いようです。前号で書いた様に、床材は健康に配慮するために第一に優先すべき部位です。無垢というからには、接着剤を用いていないものを指します。継ぎ合わせや無垢板を表面だけ厚く貼ったものは無垢材とは呼びません。また塗装にキズ伸縮防止・床暖房時の割れ・反り対策のためにウレタン塗装などが施されていると、無垢材本来の木の呼吸や調湿性能が損なわれ、冬は複合フローリングのように塗装面が冷たく感じることにもなり、無垢の木材の有り難い性能を享受できないこともありますので注意が必要です。
無垢の床材を皆さんが選ぶ際にポイントにするのが、「肌触り(暖かい・冷たい)」と「キズ付き易さ(硬い・柔らかい)」だと思います。
「柔らかい」木は冬暖かく肌触りがとても良いのですが伸縮が大きくキズは付きやすい。
「硬い」木はそれに比べて冬が冷たいが伸縮しにくくキズには強い。
そしてこの「柔らかい木」でよく使われるのが「杉」・「パイン」・「桧」の針葉樹系で、「硬い木」では「チーク」・「ナラ(オーク)」・「タモ(アッシュ)」等の広葉樹系です。針葉樹系は節が多いのが特徴なので好みが分かれるところです。自然素材の中でも商品のばらつきが大きいのが無垢材です。特に色合いや節の具合は、サンプルと実際の購入品とのギャップも大きい場合もあるので神経質な方は慎重に選択することをお勧めします。
以前に専門誌で説明したのですが私自身は無垢の床材の場合の説明ポイントとして次の6項目を挙げています。
・キズの付き易さ→木の密度によるキズの度合いを知ることと共に肌触りの違いを体感する。
・隙間や反り→施工時や数年後の隙間の可能性を目で確認する。
・日常のメンテナンス→ワックス等の塗り方や隙間に入った埃や毛の掃除の方法。
・変色→完成時と経年変化後の色の違い、日焼け具合等。
・節・色むら→節が多い場合のサンプルと貼り上がりとの印象の違い。一枚ごとの色幅の違い。
・きしみ(床鳴り)→合板等に比べて経年後の伸縮によるきしみを理解する。
このように暮らし始めてからでなければ気付きにくい点を予め説明することで後悔しない選択が出来るように心がけています。是非皆さんも依頼先にお願いしてしっかりと説明を受けて自分達に合った材種を選択してください。
壁紙(クロス)
今では自然素材ブームの影響でビニールクロスの不使用宣言をした造り手も多くなりました。そして現在、人気の素材は「ドイツ生まれのウッドチップ壁紙」・「国産和紙」・「沖縄生まれの月桃紙」・「布製の織物クロス」といった所です。仕上げ材自体への配慮は相当行き届いてきたのですが、透湿性のある材料が故に、下地となる接着糊の重要性が高くなりました。ですがF☆☆☆☆(フォースタ)認定商品として安心だからと化学系の糊が多く使われています。壁や天井に用いるので通常は内装の2/3程を占める広い面積に使用するわけですから、より安全性の高いでんぷん系糊を使うことをお勧めします。勿論、湿気の多い部屋などでは化学系の糊には敵わないと思いますが、どちらが大切なのかを考えれば答えは出ていると思いますが・・。
畳
現在の畳表に使われるイグサは輸入品が約7割で国産品が約3割と言われています。その90%以上に着色剤が使用されています。牛の銘柄と同じように海外のイグサを輸入して国内で織れば国産材として販売されますが、その問題点は農薬の残留と着色剤が考えられます。青々とした均一なイグサが売れるため青色の染色剤を用いられていましたが、実は発ガン性を指摘される物質です。国内では随分と使用されなくなったのですが、国外では未だに多く使われています。畳床では本来のワラ床から低ホルム建材の床が主流になりましたが、畳表と同様に家の中で一番人体に近い素材ですので特に配慮してもらいたいところです。現在は減農薬や無農薬で育てられた純国産イグサを天然泥染めした商品も多くなってきました。当然少々お高いですが家の床のほんの一部ですから是非こだわってください。抵抗力の弱い乳幼児が舐めたり触れたりする部分です・・・想像するだけで怖いですね。是非、食品と同様にトレーサビリティ(生産履歴)がしっかりとした素材で出来た畳を選んでください。
本物を自分の目で見る大切さ
無垢材や自然素材の代表格を例にして選び方をお話しましたが、これらの素材はどうしても材料も施工も「ムラ・ばらつき」は必ずついて廻ります。ただ、それを差し引いても余りある「本物の心地よさ」や恩恵を受けることが出来ると思います。先日当社のOB施主宅の訪問ツアーにご参加いただいた方の感想は
「この床材・・古くなって傷ついたり汚れたりしていても、全然気にならない。逆にこの味わいの良さは何なのでしょうかね?」
とにかく自然素材は写真やサンプルではなく、実際の施工や経年変化を自分の目でしっかりとチェックすることとともに、長所と短所を把握して選択することが何より大切です。「こんなはずじゃあなかった!」と後悔しないために業者任せにせず、ご自分でもしっかりと責任を持つべきだと思います。こう書くと責任逃れしたいのかと言われそうですが「家づくりにこだわる」ってそういうことだと思いますが、如何でしょうか?(笑)
( 雑誌「バイ・ザ・シー」25号 北村の連載コラム<左利きなイエづくり> より 転載)