Kitamura Kenchiku Kobo

COLUMN家づくりコラム

COLUMN

第15回 小さな家のススメ

2014. 12. 15

皆さんが家を建てようと思った時、まず家の大きさを考えるのではないでしょうか?
「欲しい部屋の大きさを書き出していくと40坪にはなるかなぁ・・まあ、贅沢は言わないけど、どんなに小さくても30坪ぐらいはないとね・・せっかく建てるのに狭い思いはしたくないし。仕上げや設備はともかく、家の大きさは後では簡単に変えられないから、せっかくだからどんな家族構成や暮らし方になっても良いようになるべく大きく建てようよ。」
というような会話をしているご家族は少なくないハズ。家づくりは確かに十人十色なので、「大きさ在りき」という考え方もあるかもしれません。
ただ、その「せっかく」の想いを込めた家づくりだからこそ、少しでも快適性と居心地良さがバランスのとれた家で心豊かに暮らしてほしいと思うのです。そこで一つの提案として「小さな家を建てる」ことをお勧めしています。決して小さいという意味は「狭い→我慢」というネガティブなものではなく、心豊かな暮らしを実現するための道だと思っています。

大は小を兼ねない

よく「大は小を兼ねる」と言われますが、残念ながら、家に関してはそう単純なものではありません。
家族構成の最大時ばかり考えてしまうと、家族が減るころには住まい手も齢をとるので、広い家の掃除や手入れなどが大きな負担となるかもしれません。それと当然、家が大きければ比例して光熱費やメンテナンス費用も同じくかかっていくことを忘れないでください。是非皆さんの暮らしを長い先まで想定してみることも大切です。

「必要充分」で暮らす

家づくりはまさに多くの夢をカタチにする作業と言われてきましたが、本当に自分達にとって「必要充分」とは何かを見つける作業なのではと考えています。家に取り入れたいモノを全部並べ、それらを諦めていく作業をするよりも、その暮らしに何があれば足りるのかという所から進めてもらいたいと思っています。
そして、そこから見えてくるのは「モノの豊かさ」よりも「ココロの豊かさ」が何よりも優先すべきということ。
是非、大事な家族やお気に入りのモノと暮らす愉しみを見つけて欲しいと思います。

小さいながらも居場所のある家

どんな小さい空間であっても家族がそれぞれの居場所、それもお気に入りの場所を造ることが大切です。それは決して大袈裟なしつらえが必要なわけではなく、例えば隅に付けた読書コーナーや、シンボルツリーの前の縁側など。一人や家族での時間を穏やかに過ごす場があるのは素敵ですよね。子供の頃の基地づくりではないですが、家づくりに掛けるエネルギーを小さな場に凝縮するのですから、細部まで気を配った計画なんて聞くと少しワクワクしてきませんか(笑)。是非、家族それぞれの居場所探しを皆さんで愉しんでみてください。

小さく建てておおらかに暮らす

家には居心地の良さと共に快適性を求められます。その面では、ひとつのBOXとも言える小さな家にとっては間取りを細かく限定しない(できない)が故に、家全体を効率的に冷暖房が出来るので省エネにもなり、家全体の温度ムラも減って安定した室内環境となるメリットも生まれてきます。
たとえ限られた空間であっても「視線の通し方」や、「明と暗」のメリハリ、「高と低」といったリズムの付け方で床面積では測れない、奥行きを感じる気持ちのよい空間は出来るものです。坪数があっても妙に窮屈だった○LDKスタイルの家に比べて、ひとつながりの箱であるかのような小さな家は、とても自由でおおらかと言えます。
また、小さく建てることは狭い敷地であっても周囲にゆとりを生みます。そのスペースに好きな樹木を植え、ソトとつながるような間取りにすることで、ささやかであっても自然の移ろいをしっかりと感じる暮らしを手に入れることが出来るのです。その上、予算上あきらめかけていた自然素材等を内装に用いたり、お気に入りの家具を置くなどして、小さな家だけれどもおおらかに暮らすなんて・・悪くないですよね。
ただし、気を付けて欲しいことがひとつあります。それは決して「つくり込み過ぎないこと」。
大小を問わず、家は入居後に住まい手が時間をかけて手を入れていくもの。小さい家だからこそフレキシブルに対応できる余白を残しておくことはとても大切なのです。

小さな空間だからこその豊かなつながりや愉しみ、そして安堵感。<br />
自然を取り込んだような暮らしは理屈なしで気持ちいい

小さな空間だからこその豊かなつながりや愉しみ、そして安堵感。
自然を取り込んだような暮らしは理屈なしで気持ちいい

家族の気配を感じる暮らし

小さな空間は好むと好まざると家族の距離が自然と近づくので、それぞれが家の中で違う事をしていても気配や体温を感じることの出来る「程よい距離感」が生まれます。その中で家族同士が膝突き合わせたり、時には距離を置いたりと、お互いの様子を伺ったりする暮らし方になりますが、それって理屈抜きで素敵だと思いませんか?
一番小さな社会単位である家族の中で、その程よい距離感に包まれて育ったならば「逞しくも気遣いのある優しい人」になれるような気がするのは私だけでしょうか?

さて、「小さく建てること」の様々なメリットがあることをここまでお話してきました。
ただ、いくら言葉を並べても「本当に窮屈に感じないのだろうか?モノは納まっているのだろうか?」という一抹の不安は拭えないですよね。快適かどうかはカタログや説明を受ければ理解出来るかもしれませんが、「居心地」というものは体感しない限りその良さは伝わりません。是非皆さんには小さな家を味わう機会を見つけて、自分の肌でその心地良さや佇まいを感じてもらいたいと思います。

小さな家にするということは決して多くを諦めるということではなく、目で見えていないものも含めて、多くの豊かさと楽しさを味わいながら暮らしていくための良い選択だと信じています。是非皆さんも愛着を持って暮らせる居心地の良い「小さな家」を考えてみてください。

( 雑誌「バイ・ザ・シー」35号 北村の連載コラム<左利きなイエづくり> より 転載)

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