第14回 造作家具のススメ
2014. 12. 14
どんなに素敵な素材で内装材を仕上げたとしてもそこに既製品が置かれただけで、なんか寂しい気がするのは私だけでしょうか?勿論多くの便利な機能や気の効いた仕掛けが満載の優れた製品であることは間違いありませんが、空気感や素材感を大事にする家づくりにはどうしても違和感がぬぐえません。皆さんの中にも何かが違うと感じている方も少なくないはず・・たぶんそれは家本体と商品の価値観が離れすぎているのではないかと思います。
そこで私自身は素材・色合の統一感というものを大事に考えているので皆さんに家具屋さんや大工さんの造作による家具で造り上げることをお勧めしています。ここでいくつかその魅力を上げてみましょう。
統一感という魅力
什器と壁との間に半端な隙間が残ったりそれぞれの高さが揃わないなど、カタチがばらつく上に素材感まで違ったりすると賑やかすぎて空間が落ち着かないものになってしまいます。その点、造作品は内部の仕上げや建具の素材とコーディネートすることが多く、また隙間なく空間に納めることも出来るので、何よりもすっきりとした統一感が生まれます。それが空間をより広く、より上質に感じられることにもつながるのです。どことは言えないけど「なにかいい!」と感じるのに、この統一感は一役買っているのではないかと思っています。
フルオーダーである(どの家具よりも家具らしく)
たとえば対面式やアイランド型のオープンキッチンなどではLDKでは一番存在感をもつ箱になるわけで、「どの家具よりも家具らしく」あるべきと考えて提案しています。既成品という決められた寸法の縛りから放たれて、本当に必要で欲しいカタチを考えることが出来るようになります。先に書いたとおり、キッチンメーカー品にはカラクリ扉のような奥様の心をくすぐるアイデアは満載ですが、私が手掛ける品には慣れた作業を出来るだけ永くできるために壊れやすいような繊細な仕組みはありません(笑)。まあ、予算の問題が大きいともいえますが・・(苦笑)
勿論、体裁よりも毎日の作業だからこそ便利に!という気持ちは充分理解した上で、それをシンプルイズベストな家具のもとで、如何に自分ならではの工夫が出来るかをお施主さんと考えていきます。キッチンカウンターの大きさやシンクの形状・引き出しの深さや段数・炊飯器をどこに収めるかetc・・すべてを決めていくので楽しくもあり大変でもありますがそれがオーダーの醍醐味でもあります。汎用的なものを与えられるのではなく、家族ならではの使い方を自分達で考えていくことが本当の意味での一品になるわけです。
永く使えること
そしてもう一つの大きなメリットは造作家具のパーツに汎用的な普及品を用いることによって長いメンテナンスが可能になることです。
工場などで生産される既成品は続々と新商品に生まれ変わり、製造中止後数年、長くても8年ほどでバックアップが無くなります。見た目が豪華な製品を揃えても、その時になって替えがない場合は扉一枚色が違うとか・・継ぎ接ぎで使っていくしかありません。ただ、そうなる前にこれらの什器は今や消耗品として考えられている時代、色々直すことよりも取り換えたほうが・・という話になってしまいますね。
造作家具品は造ったときと同じように大工や建具屋さんが手を入れることが出来るので、結果として長く使えることにつながります。そして予算が許せば出来る限り無垢材を使うことです。なぜならいつの時代にも無くなることがなく、確実に更新できるからです。
このように長く使うことで愛着をもって他の慣れ親しんだ家具たちと同じように使いこんでいける・・家の柱や床とともに良い風合いに味わい深く馴染んでいく品ってとても素敵なことだと思いませんか?
すべてを造作家具でしつらえる
無垢材や自然素材を大事にした手造りの住まいに似合うのはやはり手造りの品です。設備商品という存在ではなく、テーブルやソファ・椅子などと同じ「一つの家具」であるのが理想だと考えます。その家具を大事に使うことで、不必要な廃棄サイクルを無くすことにも貢献できるはずです。
ただ、オーダーの家具なんてどうせ高いと思われている方も多いようですが、既製品と比較しても意外だったという声も多く聞きます。予算に合わせて造りこみも変えられるし、自分のこだわりを具現化でき、永く使えるという魅力を合わせると決して高くはないのではないかと思っています。
さて、ここで造作家具の実例をいくつかご紹介します。
●キッチン
既成品にはないレイアウトも可能になるので、間取りも絡めて計画することも少なくありません。リビングダイニングとの組み合わせも造作ならではの発想が生まれます。食洗機やコンロなど人気の海外製品もセットすることも自由です。暮らしの核となるスペースを快適な気持ちよい空間にします。
![統一感のある家具として配置したアイランドキッチンスタイル](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/1._URM9875.jpg)
統一感のある家具として配置したアイランドキッチンスタイル
![キッチンという機能の箱だけにせず、収納造作の延長のようなしつらえ](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/2._DSC0142.jpg)
キッチンという機能の箱だけにせず、収納造作の延長のようなしつらえ
![大工造作でもこのような精度まで造ることができます](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/3._DSC1103.jpg)
大工造作でもこのような精度まで造ることができます
●洗面・トイレ
ライフスタイルが色濃く出る場所でもあり、限られた空間を如何に使いこなすかが鍵ですね。気持ちよい場であると同時に、モノで溢れないようにしっかりと考えることが大切です。
![大容量の病院用流しをセットしたモザイクカウンターと三面鏡付きの収納棚。](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/4._DSC0098.jpg)
大容量の病院用流しをセットしたモザイクカウンターと三面鏡付きの収納棚。
![収納を適所に配してボウル廻りをすっきりと。](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/5._URM3918.jpg)
収納を適所に配してボウル廻りをすっきりと。
![無垢板のカウンターと全面鏡のシンプルスタイル。](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/6._DSC0929.jpg)
無垢板のカウンターと全面鏡のシンプルスタイル。
![手洗いボウルもオリジナル制作でタイルとコーディネート。下は配管隠し兼収納に。](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2014/12/7._DSC0347.jpg)
手洗いボウルもオリジナル制作でタイルとコーディネート。下は配管隠し兼収納に。
●収納・書斎
趣味や所有するモノを綺麗に納めるには造作収納は最適です。棚やカウンターはインテリアとしても重要なパーツですのでどう見せるかも考えましょう。
![ホール面に造り付けの大容量のスライドブックシェルフ](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2014/12/8._DSC2065.jpg)
ホール面に造り付けの大容量のスライドブックシェルフ
![スタディースペースも大きな天板とラックでシンプルに](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/9._URM7926.jpg)
スタディースペースも大きな天板とラックでシンプルに
![TVボードを綺麗に納める。浮かすことで床を広く見せる](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/10._DSC5799.jpg)
TVボードを綺麗に納める。浮かすことで床を広く見せる
![窓の配置と収納を組み合わせて造る](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/11._URM7944.jpg)
窓の配置と収納を組み合わせて造る
●テーブル
家具作家の作品も素敵ですがその分お値段もそれなりに・・。 そんな時は他の造作や内装と同じテイストでリーズナブルに造ることもあります。キッチンと組み合わせて造るのも楽しい使い方が出来ます。
![キッチンに据え付けた丸テーブルは使い勝手が良く部屋のポイントに](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2020/01/14.内観016.jpg)
キッチンに据え付けた丸テーブルは使い勝手が良く部屋のポイントに
![杉の三層パネルを用いたテーブル。脚を廻せばダイニングテーブルにも座卓にもなる](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2014/12/12._DSC3502.jpg)
杉の三層パネルを用いたテーブル。脚を廻せばダイニングテーブルにも座卓にもなる
![杉の厚板を二枚に分けて使えるテーブル。当社オリジナルのスチール脚がアクセントに](https://ki-kobo.jp/wp-content/uploads/2014/12/13._URM1499.jpg)
杉の厚板を二枚に分けて使えるテーブル。当社オリジナルのスチール脚がアクセントに
このように什器だけでなく、収納に至るまでスタイルを揃えて造り込むことで家全体のしつらえが完成します。ただ、造作というものは家具屋や大工などの職人の技量によって随分と品質の差が大きいものですので、必ず施工例をその目で見て、質感や精度などを納得して進めてください。
そしてご自分達の目指す家づくりにどのような造作家具があればいいのかを考え、是非家づくりを楽しんでください。
( 雑誌「バイ・ザ・シー」34号 北村の連載コラム<左利きなイエづくり> より 転載)