Kitamura Kenchiku Kobo

COLUMN家づくりコラム

COLUMN

第2回 間取り(プランニング)

2014. 12. 02

日本の住まいは古くから、「〇〇の間」と呼ばれるように建物を仕切った部屋を「間」と呼び、仕切り方一つで可変性を持つ優れたスタイルでもありました。「間取り(プランニング)」とはその名の通り「間」を切り取っていく作業のことを指しますが、住宅の高寿命が謳われる昨今では家族構成の変化に柔軟に対応できることも必要で、これからは古くて新しい「間」の取り方が鍵になりそうです。
数多くの雑誌や本の間取りを見ていると、どれも個性的な家で夢が膨らみますが、同時にあれこれ迷ったり、逆に思い込んで周りが見えなくなったりと、「何が大切なのか」を見失って前に進めない方も少なくありません。また希望が整理出来ていても、実際は矛盾だらけだったりします…(苦笑)。でもそれは仕方の無いこと。当然、どんなに迷っても建てることが出来る案は一つだけ…。絡み合った毛糸をヒモ解きながら好きな形に編み上げるのが注文住宅の醍醐味ですから、是非皆さんで「間取り」を楽しみましょう。

とにかくLDK!?

「間取りで大切にしたいのは?」との問いに殆どの方がこう答えます。
「とにかく明るく広いLDKが欲しい!」
一番長く居る場所ですし、余裕のない土地や周辺環境から生まれてくる当然の欲求なのかもしれません。そこで間取りの軸になる可能性の高いLDKについて、なかでも読者の皆さんの多くがまず検討されるだろう「LDKは一階か二階か!?」を例題にして具体的に検討してみましょう。

まず、一階がLDKの場合で多い要望は、吹抜けをセットで希望されるパターン。
一階では南面の条件が良くなければどうしても暗くなりがちです。それで明るさ、開放感を得る為に吹抜けを自然と求めるようです。一階に計画するメリットは何といっても地続きなのでオープンデッキ等も造りやすく、庭いじりも出来る。家全体のつながりも生まれ、風通しも良い開放的な一体感のある空間となります。吹抜けがある場合は、一階を暖房等で暖めれば二階の部屋や共用スペースは好む好まざるとも自然に暖められます。またバリアフリー対策や万一の介護問題では圧倒的に優位となります。

吹き抜けのある1階のLDK

吹き抜けのある1階のLDK

反面、デメリットは当然ですが二階の床面積が減ります。これは建ぺい率一杯で建てた場合には延べ床面積が法令の最大限まで取れない事になるので、広さを取るか開放感・明るさを取るか英断しなければなりません。簡単な理屈なのですが意外にイメージが出来ている人はそう多くありません。また、吹抜けやリビング階段からは音が廻りやすく、冬場に吹き抜けからの冷え込みを感じる(コールドドラフト)事や光熱費がかかる事もあります。勿論、これらの温熱環境は気密や断熱方法・システムで様々な対策も出来るのであくまで一般的な家の概念としてご理解ください。

一方で、二階をLDKにする場合で多い要望は、屋根裏空間を吹抜けにしたりロフトを造るパターン。
この場合のメリットは建築可能な最大限の床面積を確保できること。その上、見晴らしや日当たり・風通しが良く、玄関等のスペースが無いことや階上で耐力壁を少なく出来ることから、広くまとまったLDKを取りやすい。小屋の梁などを表したり、ロフトをつなげたりと床面積を減らさずに個性的な大空間を造りやすいのも大きな魅力です。

最大限床面積を増やすことができる2階のLDK

最大限床面積を増やすことができる2階のLDK

デメリットは、まず高齢化・介護の問題。車椅子や寝たきりになった場合の対策をどう考えるか。二階にスペースが無ければ、一階の暗めの部屋に寂しく孤立せざるを得ない場合も考えられます。防犯上の面では、普段の生活の中心が上階のため、一階が無用心になりやすく、夏の夜など気軽に網戸だけにして寝るのは今の時代では勇気が要ります。また造成宅地等で高低差のある階段がある土地の場合は、リビングは実質三階相当の高さにもなります。日々の買い物等、荷物などを運ぶ面倒を覚悟しなければなりません。
暖かい空気は上に溜まるので、総じて夏場での二階リビングは暑くなりがちです。その為、西日等の窓からの入射熱対策は不可欠。逆に冬場は皆が集まり暖房する二階と無暖房の一階では大きな温度差も生まれがちです。(一階は「寝に入るだけなので問題ない」と割り切る方も少なくありません。何故ならばLDK「命」だから(苦笑)。)

LDKの階選択でのメリット・デメリットを取り上げてみました。繰り返しますがデメリットでも様々な対策の方法や商品もありますのでプロに必ず相談してください。また、家全体に言えますが、広い狭いという感覚は床面積の数字だけでは計れません。その計れない空間を如何に考えるのかが設計者の大切な仕事の一つですが、そのヒントとなるのが皆さんの「こだわり」でもあります。例題を参考にご家族で〇×を付けたりと、どこが「こだわり」になるのかを探してみてください。

LDKの事例をもう少し堀りさげて見ましょう。
多くの方が一番重要な場所だと考えているリビング。そこで皆さんに一つ質問を出します。

「皆さんはどの様に過ごすのですか?」

これは私が「リビングは絶対〇〇帖は確保したい」と希望されるお客様に必ず聞く質問です。少し嫌味のある聞き方ですが、その場所でどの様にくつろぎ、実際は誰が何をするのですか?という事を伺うためです。例えば「大きな四人掛けソファーを置いて皆でTVを見たい」と思っていても現状はお父さんがそのソファーの前に座りこみ、TVを見るだけ。お父さん以外は皆DKに居る時間のほうが長くて、ソファーには洗濯物や雑誌・オモチャが占有している…。

「場」を考える

「そのソファーの為に〇〇帖が欲しいと思うなら、まず使わないソファーを置く代わりに小さな畳コーナーを配して、その分ダイニングテーブルをくつろげる大きなマルチテーブルにしましょう。PCを使えるし、皆でお母さんの料理の下ごしらえも出来るし、大勢が集まったら座卓にも出来るように。畳コーナーには掘り座卓カウンターでもつけてお子さんの宿題が出来るような場所を確保したらどうですか?雨の日は畳コーナーが室内干しコーナーですかね。その畳の上でお母さんはアイロン掛けや洗濯物をたたむことも出来ますね。さあ、どうします?…それでもソファー残しますか?(笑)」

場には本当に必要な要素を

場には本当に必要な要素を

実際はこんな誘導的な会話ではありませんが、私は様々なスペースについてお施主様とこんなやり取りをしています。実は良い間取りにする為にはとても重要な作業なのです。
それは「間」という器を確保する事ばかりに躍起になるのではなく、そのスペース=「場」は誰が何をする所なのか、何が本当に必要なのかを吟味していることになります。「場」の役割を整理する事で、自分達にふさわしい「間」が見つかり、そして本当に必要な家の大きさが現れてきます。 それと共に「優先順位」をしっかりと決めておくことで、限られた条件の中であっても自然と理想の間取りが出来てくるはずです。

体感することの大切さ

それから間取りを考えるのにもう一つ大切な事は、空間で考えるということです。それはまず、皆さんの希望のイメージを現実の世界にリサイズする事から始まります。皆さんが媒体で目にする実例は広角撮影なので、実際の面積よりも広く見えることが多いのです。(本誌も含む(笑))
怖いのはその広いイメージを持ったまま自分達の空間イメージを創り上げてしまい、現実のサイズと比べて倍以上に夢が膨らんでいることも少なくありません。そこで大切なのが実際の空間を体感することです。例えば完成見学会や施工例に身を置いてみることで、広さの感覚を養うだけでなく考えもしなかった方向を見出すことが出来たりと、様々な収穫があるはずです。それだけに皆さんにとって「体感すること」は大切な仕事でもあります。

“ゆとり”ある間取りを目指す

家に求めるものはまず「大きさ」だという方も多いですね。昔から大は小を兼ねるとも言いますし…、増して一生に一度の大事業、”出来る限り”という気持ちは良く分かります。でも家づくりで大切なのは「何のために家を建てるのか」「どのような暮らしをしたいのか」という事を忘れてはいけません。
広いだけが取柄の間取りや一分の隙もない潔癖な間取りはむしろ味気ないと思いませんか?
「場」を吟味すれば、間取りに”ゆとり”が生まれます。その生まれた”ゆとり”を少しでも「四季の移ろい」や「家族の成長」を日々感じ取れるような「場」にして心豊かに暮らしてもらいたい…それが私からのささやかなお願いです。「そんな…少しでも”ゆとり”が出来るのなら収納に当ててくださいよ」と奥様方のささやきが聞こえてきそうですが…(笑)

四季の移ろいや家族の成長を感じられるゆとり

四季の移ろいや家族の成長を感じられるゆとり

( 雑誌「バイ・ザ・シー」22号 北村の連載コラム<左利きなイエづくり> より 転載)

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