Kitamura Kenchiku Kobo

COLUMN家づくりコラム

COLUMN

第7回 断熱材(その二)

2014. 12. 07

3月11日に発生した東日本大震災は多くの犠牲者と被害を出した未曾有の大震害となりました。その直後、原発被災の影響等による大幅なエネルギー不足という目の前に突きつけられた現実に戸惑い、改めて資源の大切さを肌で感じると同時に、今までの生活スタイルを見直す覚悟を誰もが持たれたのではないでしょうか?これから家づくりを始める皆さんはより一層、温熱環境に優れた住まいを造るという使命を担っています。そしてその実現に大きな役目を果たすのがこの「断熱」なのです。

氾濫する断熱材の情報

ご存じの通り断熱性能の良し悪しは快適性や光熱費に大きく影響するもので、今日ではその省エネルギー性能によってランク基準が設けられています。「次世代省エネ基準」など温熱環境の優れた新築住宅や「住宅エコポイント」対応のリフォーム工事には補助金やローン・税制優遇といったさまざまな支援が講じられています。
でもいざ「断熱材」というキーワードで調べると今や書籍やネットなどからの情報量は溢れんばかり…、そこでは長所ばかり挙げられた商品や工法への賛美と他商品に対する批判や脅かしばかりが目に付き、調べれば調べる程に混乱してくるのが実情です。

断熱の工法は?素材の種類は?

そこでまず基本となる断熱の工法や種類があるのかを整理してみましょう。
断熱の工法はまず大きくは二種類に分かれます。

●外断熱工法
構造体の外側で板状の断熱材を使い建物をスッポリとくるんでしまう工法です。断熱や冬場の結露対策に優れていることからここ数年大変注目を浴びてきました。ただ、外壁と構造体の間に取り付けるので、外装材の重量を配慮したり、断熱材の厚みが制限されたりしますが、現在では改良が進んでいるのでリスクは減りつつあるようです。ですがやはり性能が高くなる反面、材料・施工費が高くなってしまうので、私達のような造り手の予想に反して意外と伸び悩んできているような気がします。
●内断熱工法
充填断熱ともいわれます。これらは材料費や施工費が安価なので木造住宅では従来から主流の工法で、代表格ではグラスウール・ロックウールなどがあります。断熱材自体の性能は十分高いのですが、配線・配管などの障害物がある壁内部に充填するので施工精度により性能が大きく左右されることや、室内の湿気が流入しやすい材種では壁体内部での結露対策に注意が必要などのデメリットもあります。 また、素材については外断熱工法の場合は発泡系の板状断熱材が殆どですが、内断熱工法には様々な種類が出ていますので簡単ですが主な商品を分かりやすいように系統別にしてみました。

〇繊維系断熱材

鉱物系:  ガラス繊維…
岩石繊維系…
グラスウール(瓶・ガラスのリサイクル)
ロックウール
自然系:  木繊維系…
動物繊維系…
新聞紙(セルロースファイバー)、木(ウッドファイバー)、コルク樹皮
羊毛
石油系:  プラスチック系… ポリエステル(ペットボトルリサイクル)

〇プラスチック系断熱材

発泡系板状製品: 硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム
場発泡吹付け:  硬質ウレタンフォーム

こう見ると断熱材の種類は本当に様々ですね。
また今回は断熱に絞ってお話していますが、「遮熱」という概念もあります。既に屋根材や窓ガラスにも使われていますが、外壁などに使う場合はアルミフィルムを加工したシートを外断熱工法と同じく外部をくるむように施工します。身近なもので言うと、車の折りたたみサンシェードや保温パック・クーラーボックスなどの仕組みに使われているもので、今後は「遮熱」することも断熱と並んで温熱環境対策の柱となるかもしれません。

結局どの工法や材料が一番良いのか

ここでは全ての製品について長所・短所を書くことは出来ませんが、「この材は気密性能が高い分、音が反響しやすい」というように、やはりどの材料にも「良し悪し」はあります。たとえば先にご紹介したグラスウールを例に挙げると、ガラス繊維が飛散するとか壁内部結露のリスクがあるということで近年では家づくりにこだわる方々には悪者扱いのようになってしまいました。勿論この材料は防湿対策が重要となる素材ですが、隙間無く施工し気密処理をしっかりと行えば充分能力を発揮できますし、元々断熱材の中で最安値という点から見れば大変コストパフォーマンスに優れた断熱材料となるわけです。

私はお客様から「どの断熱材が一番良いのですか?」とよくご質問を受けますが、前回からお話してきたように家の温熱環境は断熱材や工法だけで決まるのものではなく、「家全体としての断熱性能」が何より重要なのです。気密性や窓の性能との組み合わせや家の形状や構法・立地条件、それにご予算も加味した上で吟味すべきだと思います。また依頼する先の施工業者の経験値やポリシーも考慮する必要があるかもしれません。

生活スタイルに合わせた選択をする

大事なポイントなので繰り返しお話しますが、断熱性能の高い家にするには、窓の断熱・遮熱性能や家全体の気密性、そしてそれぞれの断熱材を生かすための防湿・透湿対策が不可欠です。
今でも外断熱か内断熱かという論議は盛んに行われていますが、それぞれに適正な施工を行い開口部などの温熱条件もしっかりと考えれば、語弊を覚悟でお話するとそれほど大きな差は出ないと考えています。
たまに断熱こそが家づくりの出発点とする考え方も見聞きしますが、家づくりにはそれ以外にも大切なポイントが数多くあり、そのポイントを程よいバランスで計画することが本当の「良い家づくり」につながると思っています。ですから私の場合はご家族の生活スタイルをしっかりと見据えたところで、素材の長所短所を説明しながら具体的に計画を進めつつ断熱材を選定していくことも少なくありません。

断熱などの温熱環境は、住まい手の暮らし方に密接に関わっているものですので、是非ご自分達の生活スタイルを理解して、造り手にもしっかりと伝えられるようにしておくことが大切です。

良い服も着る人次第

今回の震災や計画停電によって今までの何気ない自分達の暮らし方について、皮肉にも顔面を平手打ちされたかのような、目が覚めるような感覚を皆さんも持たれたのではないでしょうか。
これからは「熱を逃がさない・入れない」高断熱性能の家づくりがますます加速します。ただ、どんなに高性能のフリースやダウンジャケットを手に入れても、ジッパーをしっかり締め上げなければ効果も発揮できませんね。どんなに器が優れていても、そこに暮らす人の省エネやエコ意識を持った生活を実践出来なければ意味がないのです。そして少し寒ければ一枚着重ねをする、暑ければ一枚脱ぐといった行動を一時的なものとせずに、それを「あたり前」と考える生活スタイルが求められています。是非、温熱環境に優れた高性能の家に住み、環境やエネルギーに優しい暮らし方を目指してください。

( 雑誌「バイ・ザ・シー」27号 北村の連載コラム<左利きなイエづくり> より 転載)

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