Kitamura Kenchiku Kobo

COLUMN家づくりコラム

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第4回 自然素材 その一 (健康住宅とは)

2014. 12. 04

とうとうこのテーマがやってきましたね。家づくりの中で一番興味を持っている人も多い事でしょう。今は空前の自然素材ブームです。十年一昔とはよく言ったもので以前は同業者からも「珪藻土ってなにそれ?」と言われていたのが、この数年で驚く変化です。各社こぞって「健康住宅」や「自然素材住宅」というキャッチコピーを掲げましたが、もはやそれが売り文句の価値すら無くなったかとも感じる昨今。建主さんにとっては選択の巾も広がり良い時代となりましたが、同時に多くの課題も出てきました。そんな今だからこそ「自然素材・健康素材」を整理する意味で数回に渡って考えて見ようかと・・それで今回は健康住宅って一体なんだろうというところから掘り下げて行きたいと思います。ちょっと堅い話もありますが最後まで是非お読みください。

何故か減らないシックハウス

皆さんもシックハウス症候群という言葉はご存知だと思います。建築基準法では平成15年にシックハウス対策の法律が施行されました。「ホルムアルデヒト」と「クロルピリホス」という2つの科学物質の発散量を規制した「F☆☆☆☆(フォースター)」と呼ぶ建材を使用することと、24時間機械換気を義務付けることで室内の空気環境を確保するというものです。
(その他TVOCと呼ばれるトルエンやキシレン等の12の科学物質も緩やかにですが規制しています)この辺りの話は、今更かもしれません、ですがそんな規制が出来たにも関わらずシックハウス症候群になる方が依然として増えているという事実がある以上、避けて通れないわけです。

このF☆☆☆☆建材を室内に用いる場合は無制限に使用できるので一般住宅の多くが室内の部材に沢山採用しています。ビニールクロスや合板フローリング・樹脂シート張の建具や部材といったように・・。それら「法律をクリアした素材」を用いた住宅の宣伝文句として皆さんがご存知の「健康住宅」という表現になるわけです。

ですが、そのF☆☆☆☆仕様の建材や商品で造られた室内を検出器で検査すると厚生労働省の定めた安全指針値を越えてしまう実例も多数報告されています。建材単体ではたとえ低い数値でも、多用すれば怖いという事です。実はF☆☆☆☆とはホルムアルデヒトの含有が「低い」だけで「ゼロ」ではありません。それに家の体積や間取りによっても建材の使用量も随分と変わりますよね。それともうひとつの大きな問題点はF☆☆☆☆基準は2つの科学物質のみを規制しただけ、その他の化学物質の対策も徹底しないと本当の解決は無いと考えています。
大手住宅メーカーや建売・分譲住宅も国から太鼓判を押されたハズのこれらの材料を「当社は全てF☆☆☆☆仕様ですからシックハウス対策は万全です!」と採用したのは良いのですが入居後にシックハウス症候が発症・悪化したり、ひどい場合には科学物質過敏症になってしまったりと、全国で数多くの訴訟問題に発展してしまっている事を知らない方も多いのではないでしょうか。

住まい方にも問題が

実はこれらの問題は建材だけの責任では終わらないのです。現代住宅では格段に気密性が上がっている為、規制をクリアした建材を使用した室内であっても常時換気を止めてしまったり、設計の問題で換気が上手く機能していないことも考えられ、その結果汚染濃度が高くなるという要因も非常に多いのです。こうしてせっかく規制を作ったにも関わらず、病気になる人が減るどころか増え続けているのが現実です。
以前、私の手掛けた家でも次のようなことがありました。そのお施主様は住宅展示場や新築の建売住宅を見に行くと10分も居られないというとても臭いには敏感な方。それで極力無垢材や本物の自然素材を用いて造り、お引越し後も何事もなく快適に過ごされていましたが、その後に購入したお子様の机の臭いに暫くの間はとても参ったそうです。幸いご家族が過敏症という程のレベルでは無かったので幸いでしたが、このように家具を始めとして家電商品・装飾品が室内の空気環境を悪化させることは以外に知られていません。このお施主様も相当気を使って、素材の配慮においては名の知れた某メーカーから購入したものだったのですが・・

家づくりのバランスも忘れるべからず

それならば・・と、一切添加物質が入っていない天然素材や無垢木材だけで造れば間違いないという事になりますが、当然そこでコストやクレーム等の問題が出てくるわけです。住宅メーカーなどから見れば工業製品でなければ狂いや割れ・色ムラ等全てがクレーム対象になるし、施工も手間が掛かり工期の問題もある事から当然避けざるを得ない。
私もご多分に漏れず「自然素材住宅」をキャッチコピーにしている工務店です。

勿論、仕上げ等の素材は出来る限り吟味しているつもりですが、実のところ家全体を100%無垢材と自然素材で建てているわけでもありません。それは何故か?お施主様のご予算やポリシーが合致しないと難しいこともありますが、何よりも私が家づくりで大事にしていることは「家づくりはバランスが大切」ということです。

健康対策だけでなく、家づくりでは誰でもが必須条件にしたいモノだらけ・・長寿命・地震に強い・高断熱・機能性・便利な設備・省エネetc・・・。
例えば耐震対策の場合を例にとってみましょう。無垢材でもない化学糊を使った合板を下地に留めつけるようなことは健康対策を万全に考えた家造りから見れば不本意なことかもしれない。でも、そのお陰で建物全体が堅固な構造になり、また今話題の長期優良住宅にも適合できる等のメリットも得られることにもなります。我々造り手もこのような葛藤と取捨選択の日々ではあるのです。
それでもまずは「家族が住めなくては話にならない」わけですから健康対策は何よりも優先すべきポイントには変わりはありません。

どこまで配慮すれば安心なのか

「それならばどこまで配慮すれば良いのか?」と皆さんの声が聞こえてきそうですね(苦笑)。
気をつけて頂きたいのは「健康住宅」という響きがいかにも健康になれそうなイメージを持ちますが、決して「家自体が家族を健康にしてくれる」などと勘違いをしないことです。キャッチコピーだけに惑わされずに「健康住宅」の事実を知った上で、我が家を「健康を維持できる住宅」にする為に何を優先すべきかを考えてください。逆に言えば不健康になるリスクを少しでも減らす手段を考えるということになります。

そのように考えると必然的に手に触れる場所や寝転がる床といった部分がまず気になるはずです。そう、セオリーは身体に近い所から配慮していくこと。まず、最初は特に抵抗力の弱い子供や高齢者の部屋、寝室などを最優先することです。人は寝ている時に一番免疫力が落ちるといわれています。特に寝室では床に近い空気を吸い込んだり触れることになるので、建材から発散する物質があるとしたら、何よりも床の素材を優先に配慮する必要があります。何故なら床面からの発散は部屋全体の70%程を占める程ですから。次に壁、そして天井、建具などというように考えてください。そして仕上げが配慮出来た上で予算も鑑みながら、その次は下地材や接着剤という順番で考えて下さい。

では、その優先的に考える部位に何を使ったら良いのか・・・可能な限りリスクを回避した素材って何!?となったところで、ようやく本物の無垢材や自然素材たちの出番となるわけです。まあ、小難しい話もしましたが、健康に暮らしていくために自然素材や無垢材を使うというよりも、理屈抜きに「天然モノはとにかく気持ちがいいから使うんだよ」というのも「アリ」かもしれませんね。次回はそんな素材達のウラ・オモテをお話したいと思います。

( 雑誌「バイ・ザ・シー」24号 北村の連載コラム<左利きなイエづくり> より 転載)

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