第21回 庭づくり
2014. 12. 21
心豊かな暮らしに欠かせない庭づくり
皆さんが家づくりを考える際、間取りや素材・設備選びなど、夢のマイホームづくりに情熱を注いでいることと思います。ですが庭づくりとなると「目先の生活にないと困る」ものではなく、単にオプションとしか考えられない方も多いのではないでしょうか?
予算配分の段階でよく耳にするのが、「外構や植栽・庭づくりは暮らし始めてからいつでもできるが、家はそう簡単に大きくしたり、手を加えることは出来ないので予算はそちらに最大限注ぎ込みたい」というご意見。そこで「予算が余ったら考える」とか「お金が溜まってきたら考える」という話になり、結局、素敵な建物が完成しても更地にポツンと立ったところでお引っ越しというパターンは皆さんも良く目にされていると思います。落ち着いてから外構工事に入るという計画的なものでない限り、そのまま暮らし始めると結局あまり手をかけないお宅も少なくないように見受けられます(苦笑)。
皆さんが家づくりに求める心豊かな暮らしは、家だけでは完結するものではなく、その地域や立地の特徴を読み、自然の恩恵を感じながら暮らすことのできるウチとソトが一体となった計画が出来てこそ得られると考えています。「敷地全体を生かす」こと、そして独りよがりではない「魅力ある街づくりに貢献する」意識をもって、せっかくある敷地を最大限生かしつつ、ソト(庭や街)とつながった本当の意味で「自然を取り込んだ気持ちのよい暮らし」を目指してもらいたいのです。
庭づくりの恩恵 (住環境を快適に)
- ●自然を身近に感じる、安らぎと心の豊かさ
- 春の芽吹きや、秋の紅葉、冬の葉枯れなどで四季を感じ、枝にとまる鳥や虫の声に耳を傾ける。 ちらちらと揺れる木漏れ日は、刻一刻と表情を変えて目を楽しませ、心に安らぎを与える。 実がなる樹や家庭菜園は収穫の喜びを、木々は季節の移ろいを、花は自然の美しさや季節の香りを教えてくれる。 樹木や植物は見ているだけでも幸せな気分にさせてくれます。 このような歓びはたとえ小さな空間でも充分に感じることは可能ですので、是非エネルギーをかけて頂きたいですね。
- ●微気候デザインで快適な住環境を創る
- 庭は「見て味わう」楽しむだけでなく、エコで快適な暮らしを提供してくれます。 落葉樹や常緑樹の高木から低木、グランドカバーまでを自然の植生にならい植えこむことで、それぞれの特徴を生かして「微気候」をデザインすることが可能です。 例えば、南西側に落葉樹の高木を植えると、夏には枝葉が強い陽射しを遮ることで、室内が木陰となることに加え、建物の外壁や周囲の地表の温度上昇を防いでくれます。また木陰が多くできることで、日なたと木陰との温度差から風が生まれ、上昇気流となって木陰の冷気が上がります。さらに一枚一枚の葉の蒸散作用によって冷やされた周囲の空気も相まって家の中に自然の冷気が流れこむ天然クーラーとなって活躍してくれます。 また、秋には葉が落ちて、冬の低い太陽高度の暖かい陽射しを室内にたっぷりと取りこむようにすれば太陽熱エネルギーを沢山取り込むことが出来ます。敷地の廻りに並べて植えるだけではなく、大きな開口部や建物のそばにも植えることで、自然をより近くに感じられるだけでなく、樹木の自然空調の恩恵を受けることができるなど、まさに庭づくりを生かしたパッシブデザインと言えます。このような微気候の恩恵を生かしたお宅が多くなれば、それは結果として地域全体のヒートアイランド現象の抑制にも貢献することにもつながってくるのです。 落葉樹や常緑樹の高木から低木、グランドカバーまでを自然の植生にならい植えこむことで、それぞれの特徴を生かして「微気候」をデザインすることが可能です。 例えば、南西側に落葉樹の高木を植えると、夏には枝葉が強い陽射しを遮ることで、室内が木陰となることに加え、建物の外壁や周囲の地表の温度上昇を防いでくれます。また木陰が多くできることで、日なたと木陰との温度差から風が生まれ、上昇気流となって木陰の冷気が上がります。さらに一枚一枚の葉の蒸散作用によって冷やされた周囲の空気も相まって家の中に自然の冷気が流れこむ天然クーラーとなって活躍してくれます。 また、秋には葉が落ちて、冬の低い太陽高度の暖かい陽射しを室内にたっぷりと取りこむようにすれば太陽熱エネルギーを沢山取り込むことが出来ます。敷地の廻りに並べて植えるだけではなく、大きな開口部や建物のそばにも植えることで、自然をより近くに感じられるだけでなく、樹木の自然空調の恩恵を受けることができるなど、まさに庭づくりを生かしたパッシブデザインと言えます。このような微気候の恩恵を生かしたお宅が多くなれば、それは結果として地域全体のヒートアイランド現象の抑制にも貢献することにもつながってくるのです。
自然の森林植生を目指して
樹木や草木などは自生しているものを除き、日当たりや乾湿、土質の酸・アルカリ性など、その場所の環境に馴染むものでなければ根付いてくれません。また私の手掛けるエリアは海に近いことから、強風対策や塩害対策など、独特の経験値も必要となりますので、家づくりと同様にその気候風土に詳しい人に依頼することをお勧めします。小さな庭でも「森林植生」ということを考えながら、その立地独特の気候条件もしっかりと吟味したうえで植栽することが大切です。
また、より自然な生態系を求めて雑木庭が流行りつつありますが、暮らしの環境づくりに役立つ為にも自然の雑木林のような植生を考えて高・中・小の木々を木立に寄せ植えることで、数年後には健全で自立した雑木庭となるように考えるべきで、自然と共生する暮らしを目指して、是非雑木の庭づくりにも取り組んでもらいたいと思います。
家づくりと庭づくりは一体で考える
さて、庭づくりを本当に暮らしに生かすのであれば、何よりも家づくりと一体で計画を進めることが重要です。家のみを計画して敷地に配した後で残った余白を植栽で埋めるという手順では、折角予算を確保しても良い効果を生みだしにくいと考えています。ですから家の基本計画の段階から、庭のスペースをどうしつらえ、樹木の種類や大きさをどう配置するかを間取り計画と並行して検討するのをお勧めしています。その結果として、家と同時に吟味するので外回りの工事予算も確保しやすいはずです。それは南面だけに限らず、東西南北、広くも狭くもその空間を生かしきるプランニングが大切で、敷地の特徴を読み込み、窓の配置やそこから見える風景を生かす植栽、時には周囲の視線を交わす役割を持たせるなど、ソトとウチの両方から検討することが重要です。
このように家づくりと庭づくりを一体に考えることで、暮らしに多くの景色を取り込み、家に居ながらも随所に自然を感じるしつらえを用意することで、実際以上の空間の広がりを感じられるとともに、住環境がより豊かで快適なものになることでしょう。
今回は現代の暮らしにおいて庭づくりの重要性をお話しましたが、一軒の住まいは街の景観の一部でもあります。家と緑が一体となる風景は家の佇まいを豊かにするだけでなく、街並みに潤いと彩りを与え、住まい手だけでなく地域の人々の心にも沢山の恩恵を与えてくれると信じています。
是非、庭づくりを通してウチとソトがつながった居心地の良い空間と街に潤いとなる佇まいを生み出すような暮らしを目指して下さいね。
( 雑誌「バイ・ザ・シー」41号 北村の連載コラム<左利きなイエづくり> より 転載)